とにかく日常芝居が素晴らしい。特に第6話、第10話あたりだろうか。単に日常系の目線でも楽しめるが、TS物である事により一層その細かな挙措を観察する価値があり、ジャンルとのシナジーが生まれている。
全体的にクオリティが傑出する分突然作画のノリが変わる部分もちょっと気になるが。
内面的には、まひろの物語としては最終話の選択でなすべき事はしていると思うが、みはりについてもう少し深掘りして欲しかったかもしれない。(この手の作品だと大抵「なんだか遠くに行っちゃった気がする」みたいなエピソードが入ったりする。)
がやはり芝居が良い。テンプレ表現に甘んじないという覇気をこんなにも感じる作品はそうそう無い。
授業風景はアレだが魔法エフェクトはやはり素晴らしい。
割とゆんゆんに優しいめぐみん。
封印されしお姉さんや謎の旅人も顔見せし良い第一話。
もみじが進んで浴衣に着替えるが少々意外。(原作との時系列の違いがある?)
「悪いものを出す」でTS薬が抜けるのは大した意図はないかもしれないが示唆的。「普通」は戻るべきという話がある上で敢えてまひろは女の子を選ぶ訳である。『付喪堂骨董店』という作品に好きな夢を見せる香炉の話があり、あらすじを言ってしまうとこれは失恋した女子高生が現実に戻って≪こない≫選択をする、つまり「正しくない選択」をする話だ。当該作品は割とシリアス系なのでこれも一種の悲劇として描かれる訳だが(そして例えば『叛逆の物語』もその例と言える)、まひろの場合は別に否定的に描かれるのではない。日常系とはそういう正しさを時に避け、避ける事を肯定するジャンルであり、故に今や権威無き「正義」から自由でいられる。
まぁ単純に社会性の面での成長物語でもあるので、この辺りは「おしまい」のロゴスに基づく私の願望半ばでもあるかもしれない。
癖の強いカットもいくつかあるが、月の下でみよとまひろが向き合うカットはおにまいらしい(個人的な感性だが)絵柄でありつつエモい良い場面。
あとみはりに睨まれたまひろが怯えたときお団子が独立して動くカットも良い具合のコミカルさで好きなところ。
演出の物凄いぎこちなさ(例えば追ってくる狼は完全に背景から浮いていてシュールだし、ミツハの覚悟を強調するなら狼の去り際をコミカルに描くべきではない)と独自言語をちゃんと話させる凝り様の落差が奇妙。
悪役令嬢物を背景としながらもそれぞれの設定がアニスの心理などに結びついており、量産系の安っぽさは全く無い。後半で明らかになってくるが、アニスの「王女として為すべき事を為す」姿勢は当初から非常に一貫しているのだ。迫力ある芝居と相俟って類稀な魅力を放っている。
キャラの顔、背景、魔法エフェクトなどのクオリティが高く、どの画も美しい。
ジャンルの域を超えて非常に完成度が高い作品。
いいんすか最終回でこんな百合が爆発して…
アニスの背後には転生者独特の後ろめたさ。本作は特にアニスの心理に関してきちんと設定を拾って動機にしている印象。
最後まで画面の美しい作品だった。