眠れない、フツーになれない二人の満たされていく青春。
淡くて、曖昧で、傷つきやすくて。そんな中に、生まれる想いだからこそ、大切で貴い恋でした。
そして、辿り着いた真脇遺跡。星の夜が訪れて、そこで中見が告げるのは、「好きです、ずっと、一生、曲が好きです」という言葉。旅の終着点で告げられたのは、そんな終わりのない愛の告白だった。
曲が返すのは、「生まれてから一番嬉しい私の顔、写真に残して欲しい」という言葉。そんな星の夜空の下で、夜に憂う二人の笑顔というのは、二人の出会いがくれたもの全てを映し出しているように見えていた。
眠れない二人が引かれ合って、互いの不安な夜を満たし合う。そうやって眠りつけた互いの穏やかな寝息と心音から生まれたのが、この恋だった。
そして、中見にとっては朝が来たら大切な人がいなくなってしまうという不安、曲にとっては自分の命が尽きてしまうんじゃないかという恐れ。そんな喪失と途切れの夜を、二人が見つけた一生の想いが、永遠に続く二人だけの時にしてくれるのだと思う。
中見と曲が過ごす家に、受川や蟹川たちみんなが集った。中見は星空の写真をすごいと言ってもらって、照れくさくて。そして、みんなで花火して、歌って…、そんな夏の宵は中見にとって、どこか憧れにも似た「フツー」の青春の1ページだったようにも見えていた。
そして、みんなが帰った後、再び二人きりに戻り。そんな時の、おじいさんになったらおばあさんになったらというふとした会話の中、曲は「そんな未来の話、知らない」と寂しそうな表情を浮かべた。それが意味するのは、この青春が永遠に続かないということのように映った。
そして、そんな曲の手を握った中見の心は、そんな儚い青春への共感と共に、だからこそ曲との関係をもうこの曖昧なままにしておきたくないという決意じみたものを抱いていたように感じた。
そんな時に、曲の母親からの「今日すぐに帰ってきなさい」という勧告。やはり、フツーで幸せで曖昧な青春の時というのは、儚いものなのだということを知らしめられた瞬間だった。
だけど、曲は「帰らない」と母親を突っぱねる。そして、中見は「俺に攫われて欲しい」と曲に告げる。「正しくないけれど、二人で始めた旅のゴールに、曲がいてくれないとイヤだ」という中見の言葉や、曲の「迷っちゃおっか」という言葉には、フツーになれない二人が欲しかった「フツー」の青春と同時に、二人だけの特別な青春を象徴しているように聞こえていた。
アニスフィアとアルガルド、二人は同じ夢を見ながらも、互いを想う姉弟の絆のもとに、異なる道を辿ることになってしまったように見えていた。
そもそも、「私は私、他のものにはなれない」と言って我が道を進むアニスも、貴族も平民も魔法の有無で差別されない国を目指すアルガルドも、共に人が何にも縛られずにありのままでいられる世界を望んでいたのだ。
しかし、非凡な姉と凡庸な弟の絆が、それを壊してしまった。幼いある日、魔物からアニスはアルガルドを守ったことが、あらぬ疑念を招き、姉は弟のために王位継承権を放棄した。でも、それはアルガルドから見れば、王の器にふさわしいアニスと比べた自分の劣等感と、そうやって自分の存在がアニスを傷つけてしまう哀しさへと繋がることとなっていた。
そんな運命の裏切りが、果てにこの姉弟の殺し合いに至らしめていたように思う。そして、結局、アルガルドに剣を振るったアニスは、道を踏み外した弟を守ってあげることができなかった。大逆の罪を被ったアルガルドも、魔法のためには危険も顧みない姉を守ってあげることができなかった。
だから、せめてアルガルドにできることとして、「姉上を頼む」というユフィへの言葉だったように思う。そして、アニスにとっても、「なりたいものになれないのは辛いなぁ」と涙を流した弟の分も、彼女のやり方で国を善き方へと導くことが、アルガルドの思いを守ってあげることになっていくのだと思う。
アルガルドの内なる願い。それは、魔法によって定義付けられた貴族と平民の身分差が蔓延るこの国を変えたいというものだった。それは、彼が手を組む貴族たちとは意を反するものであり、むしろアニスの描く理想と同じだった。結局、姉弟が共に望むのは、何にも誰もが縛られない世界であるように映る。
だけど、アルガルドには力がなかった。魔法の素質を除けば、才に溢れる姉・アニスのようなことは彼はできない。だけど、その姉も王位継承権という王族としての責任を放棄した。だからこそ、アルガルドはそれを成さねばならないと決意した。そして、彼が本来否定したいはずの王族の立場、貴族たちや魔法の力に固執しなければいけないように見えていた。
そんなアンビバレントな歪みの中で、アルガルドにとっての魔法は呪いという定義に変質してしまったのだと思う。その結果、アニスとアルガルドは魔剣を交えなければいけなくなってしまった。
でも、だからこそ、アニスはそれを放っておけない。彼女にとっての魔法とは、「明日への祈りとみんなの幸せを願うものでできている」のだから。
結局、アニスにとって、道を間違えたアルガルドもユフィやレイニのように救うべき存在なのかもしれない。彼を王子という立場や呪いと化した魔法から解き放ってあげなければいけないと、彼女は思っているのかもしれないように見えていた。
中見が眠れない理由。それは、子どもの頃、中見が寝ている間に出ていった母親にあった。でも、だからこそ、中見にとっては眠れない夜に寄り添ってくれる曲のことが特別で大切なんだと思う。
そして、夏合宿。曲の姉の方、早矢に「あいつ可哀想じゃない?」と問われた中見だけど、彼の返すのは「伊咲さんは、僕にとってカッコよくて眩しい」という答えだった。それを聞いて、早矢は安心して妹を託すことができたように見えていた。
レイニの件が解決したことで、ユフィはもうアニスの保護の下にいる必然性はなくなっていた。だからこそ、ユフィは今までの惰性でアニスの隣にいるのではなく、改めてアニスとの関係を定めなければいけなくなっていた。
そして当然、ユフィの思いの中にはもうアニスの隣にいること以外の選択肢はなかった。でも、だからこそ、ユフィはアニスの隣にいる理由をはっきりと示さなければならない。
それが、魔法省での講演会だった。魔法の使えないアニスの突拍子もないアイディアを支えるのは、天才魔法使いのユフィだからこそできること。そんなユフィの心はすっかりアニスの色に染め上げられていたように見えていた。
婚約破棄の夜の真相を突き止めたアニス。それはレイニに埋め込まれた魅了の魔石が、無意識に周囲の人を惑わせていたということだった。レイニ自身も被害者のようなとこがあるということで、彼女の保護も買って出たアニスだけど、既にアニスはそのレイニと因縁のユフィも保護しているわけで。
とはいえ、そんな見境なく魔法の力で人を助けずにはいられないのが、アニスのアニスらしいとこなのかもしれないと映るようだった。
友だちを家に呼ぶところまで西村さんは進むことができたはずだった。でも、準備に張り切りすぎてしまって、体調を崩してしまって。そんな、無駄に空回ってしまう自分がなんだか虚しくて恥ずかしくて、涙を滲ませる西村さん。
でも、お見舞いとしてみんなは変わらずに来てくれて。西村さんにとって、高田くんたちは家に呼ぶくらいに進んだ仲なんだから、それもまた当然のことなのかもしれない。
だけど、その嬉しさと熱に浮かされて、「寂しいから、帰らないで」と高田くんに口走ってしまった西村さん。だけど、それもまた一歩進めた証なのかもしれないように見えていた。
迎えた運動会、西村さんは骨折してしまった高田くんのためにも頑張りたいと決意していた。だけど、いくら練習しても足は遅いまま。
だから、西村さんは笠原さんにリレーで走って欲しいと頼み込むことにした。きっと、それは西村さんにとって、自分が走ること以上に勇気が要ることだったように思う。それに、西村さんがそうする心も、ただ高田くんのためだけではなくて、高田くんによって少しずつ変わった西村さん自身の心がそうしたいと言っていた。
だから、運動会当日も西村さんはらしくもなく、声を張り上げて笠原さんに声援を送る。それは、高田くんが戻ってきてからも同じ。そして、何よりもクラスの中心で彼女が映る集合写真が、西村さんの変化を示していたように思う。
夏到来。そして、でっかく描いた合宿の青写真。
店の前でビニールプールに浸かってる白丸先輩がかわいい。ビキニを着ける時の曲ちゃんもとてもフェティッシュで良かったです。
流星群観測会の夜は雨も雨、大雨だった。そして、心を曇らせた中見だった。きっと、中見はこの流星群観測会を成功させて、それでやっとフツーになれるんだと思っていたんだと思う。観測会の準備の過程でクラスメイトと仲を深めて、最後に本番の観測会を成功させられれば…。
だから、「何か頑張っても、最後にいつもこうなるんだ」という中見の悔しさと虚しさの吐露だったように聞こえた。結局、眠れない憂鬱な夜と同じで、この雨雲が陽を遮る。
そんな時に、不意に曲が「初めて夜に出かけたあの夜から、中見はずっと私の特別なんだよ」と口走っていた。そうやって、中見にとっても同じ様にあの夜から、憂鬱な夜でも雨でも、ふと自分を照らしてくれる曲がいたことを思い出したんだと思う。
そして、中見にとっても、曲にとっても、互いが不安定な心の隙間を埋めてくれることを確かめ合う口づけのように見えていた。