『フラクタルシステム』によって人間が働かなくてもよくなった世界の話。
ジャンルとしては社会・システムからの脱却、主人公の成長。
まず、システムの是非を主軸とした物語を作るためにはそのシステムがどういった物なのか描く必要がある。
同じノイタミナ作品のサイコパスでは、シビュラシステムの異常性をはっきりと示し、システムの是非を問う物語として成立していた。
そして、本作のフラクタルシステム。働く必要がなくなるこのシステムは、視聴者からしても魅力的で興味深いもの。この甘いシステムの裏に一体どんな真実が隠されているのか。序盤はそんな期待を抱かせてくれる。
しかし、この作品はそれ以降フラクタルシステムについて一切描かず、あろうことか残りの話数を全く興味の惹かれない一話完結や僧院とのドンパチ、そしてシステムとは特に関係のない世界の秘密の種明かしに費やしてしまう。
フラクタルシステム自体がそもそもよくわからないため、システムを守る、あるいは破壊しようとする登場人物の行動に視聴者は全くもって共感することができない。
その上主人公の成長も描けておらず、物語を構成する要素が破綻してしまっている。
他にも、作品の至る所にジブリやエヴァの影響を露骨に感じてしまい、オリジナルの強さを全く感じられなかったのもマイナスポイント。
序盤は期待できたものの、それ以降はひたすら下がる一方。
ちゃんと作れば面白くなったはずなのに……。
支離滅裂・荒唐無稽・意味不明。
最低最悪の駄作かつ、唯一無二の怪作。
一度足を踏み込めば、二度と戻れぬ底なし沼。
爪痕深く脳裏に焼き付き、決して忘れる事はない。
覗いてしまえば、もう遅い。
ジビエという名の深淵が、深く奥底で手招いている。
絶えず鳴り響く雫の音。もはや後戻りはできない。
今宵は月が紅い。さあ、貴方もこちら側へ。
文句なしの大傑作。
物語上の粗がひとつもない。
心休まる暇もなく、最初から最後までノンストップ。
1クール作品の最高傑作と言っても過言ではないでしょう