恭也は貫之の学費問題を解決する目的の為に、執筆という手段を含む同人ゲーム作りを選んだ
でも、これに恭也が情熱を注いでしまった時点で、目的は夢のリメイクになり、手段もゲームの完成そのものになってしまったんだろうなぁ
だから貫之がどう考えているかなんて考慮できなかった
慣れないゲーム制作、得意分野と異なる方向性、そして恭也しかギャルゲーの何たるかを理解していなかった点
それらが合わさって、恭也だけが正解を知っているかのような状態で制作は進んでしまった。だから他の意見が有っても恭也の意見で捻じ伏せられる。恭也の意見だけが正解になってしまう
それは貫之の未来含め他の正解を押し潰してしまうものになってしまう。恭也が自分のヴィジョンに従って動いてしまったが故に、恭也と貫之は協同ではなく侵食になってしまった
突如辿り着いた未来。これは恭也の夢だけが叶った世界?ここで恭也は何を見るのだろうか?
キースの家出理由は可愛らしいものかと勝手に思い込んでいただけにラストの展開には驚愕。
冗談では済まなそうな事態だけに、これは久々のシリアス展開に突入する感じだろうか?
カタリナとキースの会話シーンは印象的
カタリナへのジオルド接近に焦りを覚えつつ、弟として接する事しか出来ないキース。ジオルドやカタリナの心理に言及できないから当たり障りのない会話しかできない
夕日により明度の落ちる室内は想いを告げる時間切れが迫っている事を暗示しているかのようだったね
けれど、カタリナはキースの想いに気づく様子は全く無く。落ち込みの理由をお守りが負担になったと解釈してしまうのはどうなの……。まあ、これは母親のせいも有るけど
また、ジオルドの想いの深さを理解していない点も今後どう左右してくるのだろうか…
序盤からかのんや可可に協力的だけど、音楽科としての立場を優先していた千砂都。いわば壁を作っているとも感じられる状態だったのだけど、そこには幼い頃の約束も関わっていたようで、これは簡単にはメンバー入りしてくれなさそうだと感じてしまう
元々普通科と音楽科という壁が存在する学園が舞台の作品だったけど、今回は更に壁を感じさせる描写が見られたね
炎天下はかのん達の練習を阻む壁となるし、可可とすみれの間には反発する壁が見える。音楽科レッスン室の使用にも科としての壁を意識せざるを得ない
また、アイドルではない千砂都は一緒にランニング出来ない
でも、壁があれば分離された異なる世界かと言えばそんな事はないんだよね
南の島からやってきたサニパは別世界のスターに思える。また、すみれは旅行をバカンス扱いし皆で避暑を満喫するけど、神津島は本物の南国じゃなく同じ東京都
壁が有っても分離を意味しない場合もある
なら、大枠としてはアイドル活動に含まれるダンスを学ぶ千砂都もアイドルになれるかと思いきや、そうはならないようで
かのんと千砂都は目標を分け合った存在。だから壁で分離されたのではなく、分担したと言える。かのんがアイドル活動を頑張るなら、同じくらい千砂都もダンスを頑張るという話になるのだろうね
だからダンスに専念する為にあの退学届けが登場してしまうのだろうけど……
かのん達のダンスが千砂都に頼り切りになっているという点、歌詞の為に千砂都との関係性に悩むかのん
どうやら、かのんと千砂都にとって目標の分担とその為の行動を見直す機会になりそうだ
前回のさらさの話と今回の薫の話を繋ぐ愛の不器用な言葉が印象的
さらさは花道を失っても、銀橋を目指す事が出来る。異なる道がある
なら、親子3代で紅華を目指す薫には果たして銀橋以外の道を選ぶ機会は何処まで有ったのだろうか?と気になってしまう
バス停やバスを中心に触れ合いを重ねていく薫と辻の様子は一つの青春写真のよう
二人は家族が自分の進む道で輝かしい功績を残している事でプレッシャーに晒され続けている
似た苦しみを持っているから、他人から判りにくい境遇を共有出来る。それが互いに惹かれていくきっかけとなる
けれど、白と黒の二人はオセロだから隣り合う事が本来難しい。同色の恋愛をしている内は隣に居られても、進路への向き合い方が異色なら隣に居られない
薫は母と祖母が居るから紅華を目指しているように見えて、彼女が目指すのは男役。母や祖母と違う道を志す彼女はその時点で自らの意思で道を選んでいると言える
空を彩り落ちる花火を人々は見上げる。でも、銀橋を目指す薫は綺麗な華を見上げる者になってはいけないんだよね。見上げられる人間になれるよう人々が空を見る間も努力し続けなければならない
それを理解した薫の道は揺らがない。祖母との会話では異なる道を示されてコーヒーは揺らいだが、自分の進む道をこれと決めた後は波が幾らぶつかってもまっすぐ伸びたまま
薫と辻の道は分かれた。だからって知らぬ他人になったわけではなく、薫は辻の活躍に涙を流すくらい想い入れを持ち続けていたし、辻だってあのようなメッセージを後に残した
二人は恋の道を選ばなかった。けれど、それぞれプロとして活躍する中で再び交わり、その想いが告げられる日がくればいいなと願ってしまうような、そんな素晴らしいラストだったね
チームを上手く動かしてゲーム制作を進める恭也。ただ、その中で生じる恋愛問題への対処は何処か危うさが有るような……
彼はゲーム制作の夢をやり直す為に過去を過ごしているから、それに関わらない事象への関心が低いのだろうか……?
亜貴とも奈々子とも中途半端。おまけにそれを河瀬川に相談してしまう情けなさ
貫之は主人公が誰を選ぶべきか真剣に悩んでいたが、恭也はキャラの個性で分岐を選ぼうとした
今の恭也はゲーム完成へ向けチームを導く頼り甲斐の有るキャラに見える。けれど、彼の個性に含まれない役割においては何処まで正しい振る舞いが出来ているのかと不安を覚えてしまう
第一話でかのんは歌えたし、第二話でも歌を取り戻しているように見えた。でも、第三話にして再び巻き起こる歌えない問題
この展開にする事でかのんは何の為に、誰の為に歌うのかという点がクローズアップされ、クライマックスに気持ちよく繋がるようになっているね
第一話でかのんが歌えた時は内面的な変化があり、そしてかのん自身も理由を理解できているわけではないから、今回は様々なアプローチで歌への挑戦が為されているね。でも、かなり迷走している
では、迷走状態でも何故続けるかといえば、可可が「かのんは絶対に歌える」と信じているからだね
可可はかのんの為にフェスでは一人で歌うなんて提案するけど、それはフェスの後なら歌えるだろうという信頼が有るから。また、ユニット名も二人の名前を合わせたもの。可可はかのんが歌えるようになると欠片も疑っていない
それだけの信頼を寄せるのは可可の中でかのんがサニパと同じくらいのスターだから
一方でこうしてかのんを信じてくれる可可だって一種のスター。彼女が信じてくれるからかのんも自分を諦めないでいられる
でも、かのんが緊張で一杯だったように可可だって緊張に負けないよう踏ん張っていた。自分を引っ張り上げてくれた可可にだって引っ張り上げる手は必要
それを理解できたかのんは「独りじゃない」
かのんにとって可可はファンでスター。可可にとってかのんはスターでファン。そんな二人を包み込む満開の光
それは最早結果を求めるステージではないのだろうね。結局、一位は取れなかった。でも、約束を果たすと共に自分を信じてくれた可可という最高のファンの為にかのんは最高のスターになれた
かのんが歌を取り戻しアイドルとなっていく物語としては最高の序幕だったね
お金を稼ぎたいからってゲーム制作って果たしてどうなのだろう……?どうにも今回ばかりは悪手のように思えてしまうけれど
ただ、未来でプラチナ世代はゲーム制作に関わっているようだから、 必ずしも間違っているとも言えないのか…?
今回は表面的には解決に向かっているけれど、実態は何だか袋小路に入り込んでいないか?と危惧するような描写が多かった気が
今回の騒動の始まりは貫之の個人的な問題に首を突っ込んだ事から始まる。本来は他者の学費工面なんて解決するものではない。でも、後悔やピンチを否定する恭也は貫之の境遇も何とかしなければ、と考える。でも、それは大きな間違いであるように思えてしまう
加納は恭也の判断を「制作に関わるもの全てが勉強」「いい経験になる」と言うけれど、一方で以前に恭也の制作物を見た時のように良い評価はしていないんだよね
加納は言外に恭也の選択がどのような結果を導くことになるのか想定済み、というのは流石に穿った見方か
結局、ゲーム制作は仲間達に無理をさせ、河瀬川も巻き込むことになった。これは既にディレクションが破綻している証であるように思えてしまう。なのに河瀬川の心配に問題ないと答えてしまう危うさ
そんな状況でやってくる貫之の婚約者。これは事態の破綻度合いが更に増す事になりそうだ
ジオルドからの求愛、卒業後の進路。これらが重なればカタリナはどうしてもこれからの自分の振る舞いを考えてしまう
そんなタイミングで描かれた今回の話は、変わりゆくものの中にも変わらないものがあるという点を明確に伝えてくるようで素敵なエピソードだったね
マリアに語る形で描かれる今回の回想。幼少期のカタリナ達の行動は子供らしさに溢れているけれど、どこか今の関係性に通じるものも見えるね。特にカタリナを巡って張り合うジオルドとキースの構図はこの頃から変わらなかったのかと思ってしまったり(笑)
他にも木登りするカタリナやアラン、妄想たくましいソフィア等々昔も今も変わらないなと思えてしまう
それでも今はもう幽霊や雷を怖がったりしない。そういった面からは成長という変化を感じさせ、その変化を共有しているカタリナ達はこれからも変わらない絆も共有して行くのだろうと思える
ただ、そうなってくると学園入学後に知り合ったマリアとの絆が薄いという事になりかねないのだけど、マリアとは昔から一緒だったよと言わんばかりの思い出の改良は良い演出だったね
これは流石に恭也が悪い男ですよ。あれだけ奈々子の夢に真摯に協力しておいて、何の下心もないどころか、自分は亜貴とイイ感じになっていくとか流石に悪い男ですよ!
恭也も奈々子も本気へ向かって進んでいる。でも、自分の為の本気と他人の為の本気ではそこに込められた意味は大きく異なってくるのだからたちが悪い
恭也は10年前に叶わなかった夢のリメイクをしている。だから、その中で夢を諦めようとしている者にはどうしても手を差し伸べてしまう。恭也のリメイクは周囲への応援を含めている
でも、他の者は夢に初めて挑戦しているわけだから、恭也の応援の受け取り方が異なってくる。特にそれが顕著に出たのは奈々子になるのだろうね
シークレットゲストを奈々子が担当する奇策。チャンスが都合よく転がり込んでくるわけではないと知っている恭也はキツい挑戦であっても本気なら挑む必要があると判っている
けれど、奈々子にとってはキツかったとしても恭也が齎したチャンスこそ都合の良いものになる。ずっと応援してくれて、あの局面でも奈々子を信じ「大丈夫」なんて言ってくれる人間は都合が良いとしか言い様がない
奈々子と恭也には本気の意味が決定的に異なっている。だから「届けこの想い!」という言葉もどこか擦れ違う
また、裏では亜貴の本気も進行していた点がえげつない…。本気に向かって進むスピードと覚悟の違い。それが明確に出てしまったのがラストシーンということになるのだろうね…
それはそれとして、まさか”God knows…”を選曲するとは。制作側としてはこの曲を通してあの名シーンのオマージュをやりたかったんだろうか……?
それにしては色々と作品強度や深度が不足しているが為に、逆に物足りなさを覚えてしまったのは勿体なかったかな……