逃若党の未来は絶対ではなく、時行の逃げ上手も絶対ではない。だからこそ、そこには命懸けの駆け引きが生じるし、常に以前の自分を乗り越える成長が求められる
今回は保科達や狐次郎にその点が求められた形となり、同時に生きる為の逃げ力が試される戦ともなったのかな
相手が兵力は上でこちらは寡兵なら、どうしたって効率的な戦法が必要。そこで玄蕃や狐次郎は上手く動き回ったね
特に狐次郎は奮戦と評するのが相応しい働き。けれどそこで彼が反省点としたのは仲間の名前を覚えていなかった点。今回は時行の逃げを広める戦であった事を思えば、彼だけが皆を活かすのではなく、皆が皆を活かす逃げへの仕組みが必要だったわけだ
時行による逃げて生きるという信念に真っ先に影響されたのは保科だね
前回はあれだけ死こそ全て!な感じだった彼が生きるを覚悟して戦う様は将としてとても気持ちの良いもの
将が変化を遂げているから諏訪神党の者達も同様。狐次郎が生きるに必要な助けをし、敵の将に助からない道を用意した彼らの変化は逃若党があの戦いに参加した最高の褒美に思えたよ
一方で逃げ生きる事を不利な結果とさせたのが吹雪の策か
清原の無能を見抜き、彼が生きる為に逃げるよう仕向けた。それは逃げが必ずしも良い未来を導くとは限らないと示すもの
だとしたら、保科に気持ち良い負け戦を教え、諏訪明神の力になると宣言させた今回の負け戦は良い未来を引き当てた逃げだったと言える
この経験は鎌倉奪還に役立つものになる、そう思える回でしたよ
まこと祖父のお洒落具合には驚かされたよ。あの小さな家に展開されていたのは彼が作った夢の国だね
でも、それは家族からの理解を諦めた空間。その極地たる光景は揺らぐ性別に生きるまことの目を輝かせるものとなるけど、一方でその姿はまことに自分はどう生きるべきかと考えさせるものにもなるね
若き美香が受けたショックは想像に余りある。きっと彼女にとって「可愛い」と「私」は結び付いていただけに、可愛いに踏み込んできた父親はおぞましい侵略者
なのに息子がかつての父と同じように異性装へと突き進む様はトラウマを刺激する
ただ、その瞬間に彼女は父も息子も理解の範囲から外してしまった。その人らしい生き方の先に幸福が有るかもと考えられなくなった
祖父の暮らしは可愛さに溢れている。でも大事なものを捨てたという彼の生活に寂しさがあるのは確か
不器用な言葉で娘の今を知ろうとして、まことが自分をどう思うか探って。そして別れの時には控えめにまことを留めようともした
その姿からは大事なものは捨てたと言いつつ、大事なものへの未練を感じさせてしまう
祖父の姿はまことにとって辿り着くかもしれない可能性の姿。自分の可愛いを極める在り方はまことを魅了するが、まことは1人の生活で可愛さを求めるのではなく、理解される中での可愛いを求めたわけか…
改めて勇気を持って母と向き合ったけど、このとき美香も勇気を持ってまことを理解しようと努めていたと判るね
父との最大の違いは彼女にとってまことは幸せを願う対象であった点かな
異性装を理解できない美香もまことが幸福に成るべきだとは理解している
だから異性装を身に纏う先に幸福が有るのかと疑っていたようだけど…
ここでまことが様々な衝突を経て手にした当たり前の学校生活が活きてくるなんてね
まことは皆と違う姿をしていても幸せになれるかも知れない。その可能性を示せただけでも本作には大きな意味が有ったと思えるよ
まことの件については一定の終着を見せたけど、流石に咲や竜二の件についてはアニメで描ききるのは難しかったか…と思わせての映画化決定には本当に驚かされたよ
幾つもの諦めが複雑に絡まったこの物語にどのようなハッピーエンドを示してくれるのか、今から本当に楽しみですよ
狂信者ってこういう風に作るんだ……となんか妙な納得感を覚えてしまったよ。勿論、アインズは彼女をそういう風に作り変えたかった訳じゃないんだろうけどね(笑)
直裁に表現してしまえば盛大な茶番劇が描かれていた印象
オーバーロードシリーズは圧倒的な強者集団であるアインズ・ウール・ゴウン魔導国がどのようにして普通より幾らか強い者達を蹂躙するのか、そして相対する者達はどのように滅びの道を歩むのかという点を描く作品であると認識していたりする
つまりはアインズ達が向き合った勢力は滅ぶか従属するか以外を選べない。ただし、毎回同じ方法で敗北させるのではなく、その時々で相手に合わせ最適な方法で蹂躙が行われるのだけど、聖王国で行われたそれは最高の茶番であるが為にアインズ視点で見るか、聖王国側の視点で見るかによってかなり印象の異なる内容となったね
物語の進行は殆ど聖王国で行われるだけに魔導国側の登場人物は少ない。その分、聖王国側の変化は充分に描かれているね
その変化が最も象徴的に描かれているのはアインズの従者を務める事になったネイアか。彼女は聖騎士団では不遇な立場にあった為か聖騎士団が掲げる正義には疑問を覚えていた。それだけに全く異なる信念によって行動するアインズに惹かれる要素を持ち合わせていたと言えるのだろうね
作中でネイアが段々と傾倒していった「弱者は悪」「強者且つ道徳性を備えた者こそ偉大」との考え方。聖王国側でこれに適合する人間が少しでも居れば彼女の境遇は変わったかもしれないけど、そもそも魔導国を相手取った時点で強者の側に回るなんて不可能だからなぁ…
というか、キービジュアルの中央に居るカルカが序盤であっさり退場するとは思わなかったよ。彼女って公式サイトの説明に拠ると国内最高戦力とまで謳われているのに…。そんな人物が早々に脱落する程度なら聖王国はどうやったって強者には成れない。アインズのような存在に擦り寄るしかない
強者でない時点で選択肢は絞られていく。それでも足掻こうと思えば、人質少年の父親のように戦うしかないのだけど、それだって亜人相手にすらほぼ通用しないわけで
このような聖王国の状況ではネイアが狂信に傾倒してしまうのは仕方ないように思える
滅びに突き進む聖王国において、それでも足掻こうとしたのがレメディオスと言えるのかな
ただし、彼女の考え方がネイアと両極端と言える程に異なる点が聖王国敗北までの物語を面白くしているね
レメディオスって正義の考え方がかなり凝り固まっているだけで、それ以外の点については柔軟性も有るし決断力も有る。ただ、彼女に致命的に足りていなかったのは己自身の力と強者であるアインズへの敬意か
彼我の実力差を察せずアインズを利用しようとした時点で彼女はどうしようもなく敗者。逆にネイアがアインズへの敬意から様々な加護を与えられ結果的に信仰のシンボルになった事を思うととんでも無い差である
彼女に正しさが有るとすればアインズに頼るのをヤルダバオト戦に限ろうとした点かな。その考えはすぐに瓦解するのだけど聖王国が辿った道を思えば正しかった。ただ、それを実現するだけの力がどうしようもなく足りなかっただけで
やはり本作は弱者に厳しい……
望みを叶えるには他を圧倒するだけの強さが必要。それを最も体現しているのがアインズだね。
魔導国のトップとして君臨し、強大な力を持つ階層守護者を従える彼はあらゆる望みを叶えられる立場。だから今回のような茶番を仕掛けられるし、彼自身に深い考えは無くてもデミウルゴスの計画に沿って動けば彼にとって都合の良い状況は次々と作られていく
その強さは弱者を魅了するもの。聖王国の兵士達は圧倒的な力を持つ彼に歓声を上げるように成るし、人間を苦しめる亜人の群れはアインズを阻む壁にも成りはしない
そしてアインズの願いを叶える象徴的存在になったのはネイアだね
本作においては、階層守護者がアインズの深い考えの無い行動を「深謀遠慮だ!」なんて持て囃す事が有るのだけど、今作ではネイアがその役に就いている。でも、彼女の場合は「深い考えがある」と感心するのではなく、「これぞ強さの有るべき姿」だと狂信する
彼女の在り方は変質する聖王国を体現するものだね。だからラストで彼女がアインズの伝導者となっているのは納得の光景
まあ、その光景は視点を変えれば身の毛がよだつような代物では有るのだけど
こうまでアインズが他者を蹂躙する様を描いてしまうと、寒々しい気持ちになったって不思議ではないのだけど、本作が抜かり無いのはそんなアインズでも叶えられない願いが描かれた点か
ルーン装備を広めたいのにネイアの忠心やらシズの不器用さが邪魔をしてしまう様は面白おかしい。特に頑固なネイアの否定に時が止まって、更に酷い小芝居で負けを装うシーンには声を上げて笑いそうになったよ
他者を蹂躙する強さと間の抜けたギャグを両立させてくる本作は本当にファンを楽しませてくれる作品ですよ
殺し合わない敵対関係、白夜もミラも辿り着いたのは敵意なんて露ほども無い穏やかな日々
白夜はミラにやられているし、ミラは白夜にやられている。互いに負け続ける関係。最終回だからといって特別な事は何も無いのだけど、それこそが二人が辿り着いた優しさに満ちた敵対関係なのだろうね
白夜とミラ、二人の視点が描かれた今回だけど、それによって描かれる内容に大差はない。言い換えれば二人共一つの場面に対して似たような事を考えている
相手の優しさに嬉しくなって、相手の笑顔に多幸感を覚えて
それはどちらが勝ったも負けたもない状況。かといって引き分けというわけでもない。互いに負けているようなもの
世界を救う魔法少女と悪の参謀が仲良くなって、行き着いた先は互いに負け合う関係。相手から得られる幸福に浸り、相手に参ってしまう二人の様子にはこれから先を期待してしまう
だからこそ、不本意な終わりを迎えてしまった原作を基に、終わらないラストを提示したアニメ版の優しさには感無量の気持ちとなってしまいましたよ
カオスも度が過ぎれば言語化した感想が難しくなる…
そんな最終回はもはや無法状態となっていたよ。最終回詐欺に唐突な謎設定にそして全キャラ大動員。最終回あるあるななメタネタを多分に含みつつも展開されているだけに、言葉での説明が難しい…。というかせんとくんのインパクトが強すぎた(笑)
前回の前フリは何だったの?という調子で始まった今回はもう本当に好き勝手やっているなという印象
ただ、面白いのはのこが好き勝手やっているのではなく、制作側が好き勝手やって、のこが被害者になっている点。のこになら何でも有りという認識がこの最終回を作らせている
いわば、のこは自分が振り撒いたカオスにしてやられた形となったわけだ
その構図を打ち破る様が最終回の醍醐味になるわけでも無いのがまた別の意味で面白い
虎子が意識するのは部活の維持ばかり、餡子とめめはそもそも勝負に興味がない。最終回なのに全く一致団結出来てない
そんなダメダメな状況で過剰な暴走をするのこをゆるキャラ大先輩のせんとくんが強烈なダメ出しで締めてくれる様は何というか本作の終わらせ方として逆に有りだったのかも知れない…(笑)
これまで本作は時行の逃げ上手を戦の時代において、どう活かすかという点を主題にしていたような
だとすると、今回の救援は逃げ上手を他者へ広める一歩目かな
この時代の武士らしく喜び勇んで死に向かう保科達に、生きる喜びを知る時行はどう逃げの良さを伝えるのかな
まず国司の横暴とそれに晒される無辜の人々の対立が描かれる事で一部を除き命の尊さを理解していると定義しているね
生きる為には稲が必要でそれが余計に取られるなら命懸けで抗議せざるを得ず、そのような者達を容易に斬るを快く思わない者も居る
頼重の救援も同じ路線の発想。だからこそ狐次郎も自身の双肩に命が懸かっていると感じる
対して保科達はキマりきっているね…
命をどう救うかよりも命をどう使い潰すかを考えている。それはナレーションが言うように恐ろしく自分勝手で挟視野的。命の尊さを知り為政者としての視点も持つ時行が許せないのは当然
ただ、視点が違い過ぎるが為に二人が会話だけで判り合うのは難しい
名誉の為に死ぬべきか、戦う為に生きるべきか
折角生き残れてもどう死ぬかばかり考えるなんて、命の使い方として間違っている。そんな相手の言い分を負かすにはそれこそ相手より自分が強いと示すしかない。
一族や故郷が皆殺しされても名誉など感じられなかった時行の強さが保科を打ち負かしたわけだ
保科の死にたがりに対しては時行の逃げが上回った
けれど次の相手は何としてもこちらを全滅させようとする殺したがりの清原信濃守
この戦こそ、いずれ尊氏と対峙し鎌倉を取り戻そうとする時行の真価が発揮されそうな
また、逃げる時行と戦う狐次郎の関係をスケールアップさせるものにも成りそうな予感
サブがゲーマーチームから誘われても、赤猫のチームを選ぶという温かいEPから始まったのに、最終回でクソ客を出してくる本作侮れない
当たり前の日常を続ける面でもチーム力は発揮されるが、問題が発生した時こそチーム力は最も輝く
あの瞬間、バカにされていたのは珠子か店か。その認識が最終回を飾るに相応しいお題でしたよ
珠子の元上司は猫がラーメンを作るという点にまずケチを付けたけど、最も言い掛かりを付けたのは珠子に対して。だからハナも珠子に怒るよう勧める
なのに珠子が怒ったのは赤猫のため。それも有ってか他の客も助勢するし、クリシュナも表に出てくる
あの瞬間は店員も客もOne Teamを形成していたね
今の珠子は赤猫の為に動ける人間。だからこそ心配なのは雇用条件を今も満たしているか
でも、そんなの要らぬ心配であるのは先の話を見れば判る事で。佐々木の来歴を明かされた事を含め、珠子は赤猫の一員として誰もが認めている
そうしてもっと明確な証である正社員登用が待っていたというのは良かったな
以前の職場で人間扱いされなかった珠子が猫のお店で「人間で初めての社員」へと認められるまでの物語だったのだと思うと中々に感慨深いものがある
猫のラーメン屋というファンタジーな代物を、それでも時には猫が働くとはどのような問題が有るかという点も含め描いた本作。穏やかな気持ちで楽しませて頂きましたよ
修学旅行という常とは異なるグループが形成されるイベントが描かれた今回は人の繋がりを改めて感じる内容となったかな
早乙女が近づきたいと願う早瀬はまことも近付きたいと思う相手。そんな相手と仲良くなれたのは特殊イベントに拠るものではないというのが今回の要点だったのかな
以前、友達だった相手とまた友達になるというのはかなり勇気が必要。おまけにコミカルなお邪魔虫が次から次へと現れれば更に難しくなる
でも友達ともう一度友達に成るなんて、それこそ友達らしい事をすれば済む話かもしれず。着物レンタル辺りから普通の学友らしくなり距離が近付いたまことと早瀬の様子は微笑ましいね
でも、人と人の繋がりは時に痛みだって齎す
まことを女子と勘違いした男子生徒の振る舞いはまことから繋がりを奪うものだね。まことに裏切られた自分を守る為にまことがあの姿で学校に居る事を否定しようとした。それはまことから繋がりを絶たせてしまう。早瀬もその状態では容易には近づけない
そのような壁を突破するにはやはり勇気が必要で
早瀬の勇気を見た早乙女が同じように勇気を出して彼女と友達になるシーンは良かったな
そんな二人から勇気を貰ったまことが母親に向き合ったのは良い未来へ繋がるかと思ったけど……
向き合う事を許さない母の拒絶。そのルーツには何が在るのだろうね?
人類最強の父・神雲を前に千夜に求められたのは己の成長を示す8年間の発揮
ただ、あの戦いは強い力をぶつけても、より強い力で返されると証明するものになったような
連続技を放つ千夜を強いと言うなら、いなす神雲は更に強い。二人をアマテラスで屈指させた無の民は更に強いという事になる。強さの連鎖に果てはない
神雲は千夜が願いを叶えるのに強さが必要だと言う。なのに人類最強とまで呼ばれた彼は望みを叶えられなかった。それはより強い力がより大きな願いを叶える訳では無いと証明してしまうようなもの
千夜はこの親子喧嘩を通して父に自身を認めさせたかったのに、別の力がやってきて願いを剥奪した。力が有っても力だけでは願いを叶えられない
無の民が召喚したアマテラスは最上級の力の証明となった。けど、他方で子供にとって最も強さの象徴と言えるのは父親かもしれない
アマテラスを前にして為す術なく呑まれた神雲がそれでも月湖だけは助けた。また、既に故人である為に力なんて無い筈の月湖の父も彼女を助けるのに一役買った
それらが叶う様子は力という言葉では説明できない強さを感じられるシーンでしたよ
心理テストは深層心理を表すもの?という点はさておき、今のミラは意識した発言とその内心がチグハグな状況であるのは確か
悪の参謀として魔法少女を倒すと公言しながら、実態は白夜と逢瀬を重ねてばかり
白夜が心配と家を訪ね、そのままお泊りしてしまう今回はその乖離が強く出た印象
言葉と想いが違うという点で白夜は判りやすい
言葉はミラに一世一代の覚悟を思わせる程だったのに、実態はお化けが怖いというもの
でも、それだってミラを不思議存在でないと否定したい想いが強く出すぎてお化けが怖いという言葉になった
白夜がその調子だからミラも深層にある想いを引き出してしまう
敵対しているだけの関係なら、一緒に寝ていても何も思わない。眠れないなら言葉に表せない程の想いが在るからで
深層にある想いはもう表層に出かけている。特に白夜が寝言で「参謀さん」と何度も呟いて、ミラがそれに喜んだ事からも明らかで
後は二人が思いを認めるだけの段階であるように思えるが…
のこの言動がカオスを巻き起こす事態は数多けれど、物言わぬ状態でもカオスを引き起こすのは厄介だなぁ(笑)
てか、あの光景には無反応なのに、タグには反応するクラスメイトは何なの…
カオスは必ずしも言葉を必要としない。そんな前フリを感じたね
マタギが襲い来るEPは意味判らん状況が一周回って意味判る…というか、のこってシカなのだから鹿狩りの標的にされる事も有るかと納得…
狩る者と狩られる者。そこに言葉は要らないから、二人は言葉を交わさないままに静かな勝負を始める訳だ
でも、校内でやるのは迷惑だから止めようね?
言葉を不要とする勝負、それだけに言葉が通じないギャルにマタギは負けるし、抗弁が効かないカミさんにも負ける。最終的に言い訳不可能な状況を押さえられ警察に連行されるのは可哀想だったが
謎の雰囲気が出てたシーンは面白い物が見られると思ったんだけどね…
言葉を介さないカオスを描いた後なだけに、余計なカオスを省きのんびりとした会話劇に終止したCパートの話には特に穏やかさを覚えたね
一緒に服を買いに行く道中、というひねりの無い構図は彼女らがこの物語において尊い絆を築いたのだと伝えてくる
それだけにラストの不穏さが何故起こったのか気になるが…
しょうもない回に見せかけて重厚さが有りつつ、結局しょうもないオチで締める何ともバランス感覚の難しい回
冒頭、かじかんだ手で祈る時行の姿からは貢献への感謝と死なせた責任が感じられる。姿隠した死者に祈るのはそれに意味が有ると信じているから
祈りに力が有ると誰もが信じている
頼重の神力回復、どう見ても精力付けてるだけじゃん…というツッコミはさておき、胡散臭い頼重の言葉に従う時行は遊ばれてるようにしか見えないし、郎党からはヤバい勘違いもされる
見えない力を取り戻す工程の見える範囲は怪しさのみ。これらのシーンは見えないものよりも見えるものによる影響力の方が強いと示している
だとしたら、雫が見せたものは面白いね
普通は見えない神獣、されど時行は見てしまった。それは時行に不可思議を信じさせる理由になる
なら、釣られて頼重の力をも信じる背景となるね。神力が戻ったのは聖なる水だけでなく、頼重をより強く信じるようになったからかもしれない
そうして信じる、祈る強さを示しながらも、信仰の象徴を無自覚に餌と考える尊氏は既に人外の領域に到達しているのだと理解させられる。彼にとって信仰など喰らうもの。また、直感力も人外じみている
面白いのはそんな彼を実弟である直義も少し不気味に感じている点だろうか。見える繋がりを持つ弟からしても兄の正体は見定められない
見えるを喰らい、相手に見せない尊氏の恐ろしさを改めて感じたよ…
自分は唯一の特別に成れないからと気遣って距離を取った筈なのに、それが最適解では無いと突き付けられる内容は心に来る……
今が最適解では無いなら他に最適解がある筈。でも少し考えて出せる答えじゃないから竜二も咲も苦しんだ訳で
それでもと、藻掻きながら自分達の在り方を探る彼らの姿はとても美しい
竜二が喜ぶ返答と関係を築いた筈が、まことが陥ったのは孤独の境遇
あの夢は自分の思慮の無さや本当の気持ちを教えるものになったけど、だからこそ単純な解は許されないとの自覚へと繋がる
でも、それで何かしらの答えを出せる訳でもないから余計に苦しむと
雁字搦めの状況、竜二とまことの遠慮を越えた配慮に拠って心の明るさを取り戻した咲が二人に仲直りの機会を用意するのは良かったなぁ
二人共、咲が自分達の為に行動してくれたと判っている。一人だけで答えが出せないとも判っている
だからちゃんと逢って話して答えを出すしか無いと、関係の選び直しへと進めた
まことと竜二は恋人でなくなってしまったけど、これまでに培った絆が有るから遊ぶ時間も言葉も途切れない
一方で全てを交わし合っていた訳では無いと判るのが隠れん坊の話か。あの時の経験は共有している。でもそこで何を思っていたかは知らなかった
それは相手の事を判っているつもりでも知らない部分が有る証拠であり、勝手に決めた関係も正しくないと示唆するもの
答えはまだ出せないけれど、一緒に居る事を選んだまことと竜二の新たな関係は尊い…
そして、人と人の関係といえば再会した咲と母親はかつての関係を取り戻せるのかという点が気になる。また、咲の祖母が再会に反対する理由も…
答えが見えないだけに希望と失望のどちらも有り得そうな…
今回は縁の深まりを感じる内容となったかな
猫達の昼寝はいつの間にか珠子が自然に混ざり寝るように。それは珠子も猫達も互いを信頼してる証
また、文蔵にもかつて信頼が深まる瞬間が有り、それが今の赤猫へと繋がっているのかと思うと感慨深い
尽くしてくれる飼い主に貰われたのに文蔵は佐々木を信頼しなかった
そこにどんな違いがあるかは明瞭ではないが文蔵は見えない縁によって、佐々木ではなく先代店主を選んだのだろうね。また店主の方も言葉を覚えようとする文蔵を見て縁を覚えたようで
説明が難しいけれど、それは確かな繋がりと言える
珠子は子猫を拾ったが、検査もしてない子猫は誰とも触れ合えない。また子猫の側も心を開かない。その状況は珠子と子猫の間に縁が無い証明
それだけに脱走の如き脱兎の最中に相思相愛の飼い主を見つけたのは驚きだったな
あれこそ正に運命の出会いというやつだろうね
クリシュナが多少無理な細麺でも果敢に挑戦するのは数多の縁の上に成立する今の尊さを意識しているからかな。それはプレッシャーとなるだけに彼女をピリつかせてしまう
そこで尊い今へと多数の縁によって辿り着いた先輩・文蔵が手助けする流れはとても良かったよ
幻術で作られた子供の国が描かれた今回は子供と大人の差、もしくは子供が子供を辞める時というのを強く感じた内容となったかな
幽界での姿が幼い千夜の本質は子供のまま。けれど。古恩の願いを聞き届け、子供の国から抜け出した彼は幾らか子供から卒業した。それによって絶対的な壁である父・神雲と向き合えたのだろうね
子供と大人というのは何も成長の度合いだけに留まる話ではなく、実力差にも適用できる話
月湖を危ない目に遭わせられないという千夜は彼女を対等な実力者と見ていないようなもの
また、山の神も圧倒的な高みから千夜やたまの願いを聞き入れるかどうかを決めている。それは誰よりも成熟した存在である証かもしれない
千夜と月湖が幻術に囚われたのは、少し子供らしさを残しているから。耐えられたたまも童心のように楽しめた時代を思い出せば意識を持ってかれてしまう
その状況で敢えて遊べた黒月斎は成熟した存在か
彼の在り様は別の面も教えてくれるね。大人も時には子供のように遊ぶ事もある
それらを踏まえれば千夜が神運を前にして「遊び」を誘えたのは面白い
今の千夜はかつて神雲の教えに従って居た頃の子供とは違う。また、正義にこだわる父の子供っぽさを見抜く背伸びも出来るようになった
命の取り合いではなく、聞き分けの悪い相手を黙らせる親子喧嘩。強大な力を持つ二人による戦いはどのような楽しみを提供してくれるのか、それこそ楽しみですよ
白夜側もミラ側もしているのは作戦会議と呼ぶのも憚られる中身のない会話。でも、それは言ってしまえば豊かなコミュニケーション
白夜のちょっとアレな変身口上もお披露目されるし、ベラトリックスやベテルギウスのちょっとアレな本性も露わになる
その中で最も目立ったのが白夜と御使いの交流か
御使いはゲスいけれど白夜を最低限大事にしている。白夜と会話するのもそうだし、銭湯行くのも食事も一緒
それを優しさと勘違いしてしまうのは間違いだけど、衒いのないずけずけとした会話は二人に心の壁がない事を教えてくれる
これをそう呼ぶべきではないのだろうけど、それでも白夜が云うような家族っぽさを何処となく感じられる交流でしたよ
自分は花粉症になったと認める認めないとかありふれたネタを導入に使いながら、結局のこというカオス因子が中心にいる事で徐々にいつものカオス展開になっていくのは本作らしい
のこは花粉に負けているけど、花粉に話までも支配させなかった訳だ
それでも自身の頭部を洗ってる様子は流石に怖いよ……
のこが巻き起こすカオスに虎子が巻き込まれる事でツッコミが響き渡るのが通常営業だけど、今回はひたすら傍観者に徹した為に普段と異なるカオスになったような
のこの遣り方はどう考えても生け花ではない。でも茶道部内にツッコミは居ないから彼女のカオスが部支配する
なのに、あれだけ汚染しながら飽きたという理由で去ってしまう彼女は本当に暴君のような存在ですよ
虎子とのこが絡まないカオスだけれどギャグ調ではない珍しいEP
めめが精魂込めた田植えの様子をメインに据えた本作にしては大人しい話なのだけど、そこでめめと餡子が静かな遣り取りに終始する事でいつにない雰囲気になっていたね
笑いの支配から逃れている為に感じられる穏やかさ。偶にはこんな話も良いかなとそう思える回でしたよ
咲はまことを特別に思えず、父から唯一の特別として扱われず。彼女を❝特別❞にしてくれる人は居ない
そんな咲が求めた本当の特別が遂に判明したけど、それによって今の咲はどうしたって望んだ特別は手に入らなくて、それを察してしまうから竜二が決断せざるを得ない内容が辛い…
父も誰も彼も咲の異変を気付いてやれなかったが、彼女を特別に思うまことは別。咲を一人にして置けないし拒絶されても関わろうとする
まことにとって今日は特別な日だと察して遠慮しようとする咲から言葉に表しきれない苦しみを出してやって、その上で抱き止めたまことは本当によくやったよ
ただ、タイミングが悪かっただけで…
竜二の特別はまことでも、まことの特別は竜二じゃない。それは男同士だからかもしれないし、友達だからかもしれない
竜二は竜二のままじゃ恋人に成れない
それでも、デートの際にはまことが似合いのプレゼントをくれるし、男二人の状況を気にするなら女装してくれる
まことの優しさは竜二が相手であっても変わらない
でも、それは恋人だけに向ける❝特別❞の優しさじゃない。そして、そのような優しさは竜二だって咲に向けている。特別を探す咲を恋人じゃない二人の優しさなら癒やしてやれる
また、まことのあのような拒絶が有ったのならば、竜二が無理を続ける理由はもう無くて
だとしても、まことを気遣う振り方をする竜二の優しさが痛い……
誰かを推す感覚って、その人を好きな気持ちに留まらず、応援したり健康を祈る要素も含まれてくるのかな
その点が判り易いのが城崎だね。赤猫を手伝ってくれる彼は猫達から好かれている。それこそサービスされるくらいに赤猫は城崎を推している
似た要素がハナ等に適用された訳だ
ハナを取り戻しに来たヨーコはハナを大事にしている。だからハナの為に無理をした
でもハナだってヨーコが大事。彼女を苦しみから解放する為に離れる選択をした
意見対立を起こす二人を赤猫推しの御所川原が引き離すのは面白い構図。相手を大事にする気持ちが判るから仲裁に入れる
相手を大事にする仕方が判れば離れていても大丈夫。ハナは赤猫で働けるし、ヨーコは元いた場所へ戻れる
今のハナは赤猫やそこで働く猫達を推していると言えるのかな。ヨーコもハナが何を大事にしているかを理解できれば彼女の新たな生き方を肯定できる
赤猫お薦めのスペシャルをヨーコ達が頼むラストは良かったな
絶対強者と成り果て強固な結果に守られる迅火を見た千夜達が求めるのは更なる強さ
迅火と相まみえる強さになるにはどうしたら良いか?それぞれ思い悩む前に現れたのはまた別の強者・泰山
狂い神になった上に断怪衆時代を無かったこと扱い。そんな彼を見ると強さは持つだけじゃなく、どのように活かすのかという点も問題になってくると判るね
強さへの悩みが特に強く出たのは月湖だね
前々からどうしたら千夜に届くのかと悩み続けた彼女の悩みは深いからたまや先人達の助言が必要になるが、それでも実際に強くならない限り悩みは晴れない
千夜に並び立とうとするならば彼女は正道で居られない。だからこその邪道
ヤバい感じの爺さんに師事する事になった月湖はどのような強さを手にし、それを千夜の為に使うのかな?
千夜は幽界干渉で無の民に対抗できるようになった。その意味では単純な強さは頭打ち状態。更なる強者に敵う思う方法が無いから父の助け方も思い付かない
そんな千夜にとって古恩との出会いは良い契機。衰弱した彼をどのように助け、その願いを聞き届けるか
それは己の強さをどう使うかという話に通じるもの
古恩から託された煙管は千夜に父と再会する別の理由を授けるものであり、ただ強いだけで為せるものなど無いと思い知らせるもの
だというのに、千夜の中の闇達が自分達に出来ない事など無いと伝えてくれるのは良いね
己に纏わり付いた余計な弱気を吹き飛ばすような遠吠えは彼がまた一つ成長した証に思えましたよ
これは甘い、とても甘いなぁ
クリスマスという特別なイベントを舞台に繰り広げられる甘いひと時
悪の組織もクリスマスを祝う光景に違和感はあるが、その普通ではない時間が白夜とミラという普通ではない関係性の二人にとって良い作用となっている
二人が共に過ごす時間が尊く感じられるよ
一緒に買い物をして、一緒に料理を作って。それ自体は二人の関係性を無視すれば一般的などこでも見られる光景
一緒に食べて、美味しいと言って。それは普通の光景だから良さが輝くもの。加えて2人が本来は敵同士で、でもあの瞬間だけは敵を辞めていたならば尊さばかりを覚える光景
貴重な時間は2人に更なる一歩を踏み出させるね。ついに名前呼びだなんて
敵同士で本来は殺し合いをする関係なのに、二人は敵という言葉で片付けられない関係を築いてしまった。「今日は敵同士じゃない」と言い訳をしたけれど、じゃあ明日からは敵に戻れるのかといえばそう成らない筈で
これからの話しがより楽しみに思える回でしたよ
ぬるっとサザエさん時空に突入した本作、だと云うのに早速季節ネタをぶち込んでくるなんてね
その時点で時間管理は失敗。なのに虎子は体育祭のタイムスケジュールを気にして心を擦り減らす。その状況だけでも面白いのに最大の原因がのこによって汚染される現実である為に尚の事面白い(笑)
これまでものこの存在は日野市の日常をシカ空間へと侵食してきたが、それが体育祭という狭いイベントに集約される事でカオスが極まる状況に
ていうか、のこによるシカネタを可怪しいと認識しているのが虎子と燕谷兄しか居ないって本当に異常な事だと思うよ
でもそれが面白さに拍車をかけている
のこが際限なく暴走すれば虎子の心労は溜まるばかり。発散できないのはこれが部室ではなく体育祭だから
そんなだから理性は極限に達した心労によって破られるのは当然の成り行きだったのだろうね
でも、それによってカオスまで破られたわけじゃない、だから虎子が実はヤンキーだという事実もあっさり受け入れられてしまう
結果的にカオスが虎子を救ったと言える。また、誰もが楽しめる体育祭にする面でも上手く作用したと言えるのだろうね
それにしても、虎子の精神にダメージを与える為とはいえトラブルが立て続けにやってくる様は流石に可哀想としか言い様が無い。あと、皆がチアを楽しむ横で穴を埋めているのも可哀想で可愛かったな(笑)