人とドラゴンとしてラベルが異なるのだから相容れる訳がない。それを気にしない小林のロジックをぶち壊す為のイルルの罠は珍妙な事態を引き起こしたね(笑)
これで小林が男と女というラベルの違いによりトールと相容れなかったらイルルの言を認めた事になるわけだけど……
トールやカンナにとってはいつもと変わらぬ小林なのだから、変わらぬ距離で接している。変わってしまったのは小林の方
けれど距離を置かないと、と考えつつも小林とカンナ、小林とトールとしての距離は保ち続けているね。男と女というラベルによる本能には従おうとしない
ラベルによる分離が行われないなら、そこには個人として判り合う、判り合えないという判別が行われる事になるのだろうね
だから小林はトールに男として欲情するよりもメイドへのこだわりで判り合えないし、人には害しか与えないというクレメネの主張も判り合わない
小林が判り合いたいの男と女とか人とドラゴンとかではなく、個人としてのイルル
小林の言葉によって心を開いていくイルルから飛び出したぐちゃぐちゃになった本心。人やドラゴンというラベルに関係なく遊んでいたかったという望み
だから小林もそれに呼応してとてもあっさりと、そしてイルルという個人にとって最適な形で「遊ぼっか?」と言えたのだろうね。それは小林とイルルが判り合えるポイント
面白いのは、ドラゴンとして悲惨な経験から義務に縛られていたイルルと、社会人として過ごす中で義務に縛られていた小林の経験にリンクする部分が有ったことかな
ここでも人とドラゴンというラベルを超えて、個人として判り合えるポイントが有ったということ
そうしてイルルがドラゴンではなく、新しい家族として小林の傍に居るなら学んでいかなければならない事は沢山あるし、考えなければならない事も沢山有る。それはイルルがイルルとしての形を取り戻す時間にも繋がる
新しい生き方の一歩を踏み出したイルルの為に用意された食器類はイルルが個人として受け入れられた何よりの証しに思えたね
歌う事は好きなのにいざという場面で歌えない。そこに音楽科不合格の烙印が絡み、歌うことすら否定されたかのような心境になりかけていたかのんの変化が丁寧に描かれていた第一話だったね
また、彼女の『好き』と歌を引き出すために感情豊かな可可が良い働きをしていたね
普通科と音楽科の制服の違い、そして音楽科である恋による注意
それらはただでさえ必要な場面で歌えないかのんに更に歌の道を諦めさせようとするもの。音楽科に入れなかったのに音楽の道を進もうとするの?と言わんばかり
でも、何も進路がそのまま自分の進みたい道を制限するわけではないんだよね
音楽科に進んだ千砂都は新しいバイトを始めているし、可可は普通科であるにも関わらずアイドルになろうとしている
進路や所属がそのまま自分の在り方を縛るわけではない。だからかのんが歌を好きであると知っている千砂都や可可は何度もかのんに歌うように促すわけだね
かのんはいざという場面で歌えない事に劣等感を覚えていたようだけど、一方で道端であろうと自分の世界を形成してミュージカルばりに歌い上げる。それはそれで凄い才能だと思うけどな……と思っていたら、最後の最後でやってくれたね
これで歌えない性質が解消されたかどうかは判らないけれど、誰にも遠慮しなくて良い自分の『好き』は取り戻せたのかな
駅という共感度の高い場所に三人が並ぶ様子は駅を介して三人の想いがリンクしているのだと感じられるね
だけど亜貴と奈々子が今より幼い姿だったのに恭也だけ大人の姿
三人とも過去に思いを馳せているのに、恭也だけそれは未来の光景という、早くも『時間』のズレが見え始めている
だから摩擦が生じるのは当たり前だったのかも。今回は相手が貫之だったけど、これからも恭也は自分の経験や過去からアイディアを出す中で誰かの未来を引用してしまうかもしれない
そういった意味では10年前の過去に戻った恭也はそれによって『時間』に苦しめられていくのかもしれないね
3分オーバーだからと脚本を削れないかと話した事で亀裂が生じた恭也と貫之。彼らが話しているのはまだ形になっていない映像、未来の話
脚本だけが問題と決まったわけじゃないから貫之は粘る。やってみないと判らないと言う。でも恭也は良いものを作りたいという未来への意志に向き合わなかった事で、未来の問題が現代の問題となってしまう
恭也は目指す未来が明確だから現代を疎かにしがちなのかも
恭也だけがサークルに乗り気になれなかったのも、目指す未来の為に現代を寄り道していてはいけないとの迷いが有るからなのかな?
現代における解決策を貫之が脚本を削る事だと思ってしまうから彼と向き合うことも出来ない
加納との会話によって『時間』に悩む者に格差は無いと気付けたようで
過去でも未来でもなく現代をやり直すために恭也が『時間』を後回しにすると決めるシーンは良かったね
そしてラストに襲い来る新たな問題は『時間』だけでなく『物』も課題となってくる。これに対して仕方ないと諦めずどうやり直すのかな?
少しずつ明かされていく紅華の日常。そこは伝統と競争によって形作られた幾つもの独自ルールが存在するようで。また、女の世界としての目に見えない縛りも存在する
だから逆に、それを気にせず振る舞うさらさと愛の存在が際立っているね
本科生による指導、それは紅華の生活に不慣れな予科生を導くものだけど、一方でライバルを牽制する意地悪も隠されている。そして隠されているからはっきりと言葉や意思にされることはない
だからこそ、背も声も大きく夢もはっきり主張するさらさの存在は嫌でも目立つ印象を受けるようになっているね
リサによる牽制、それは虐めるつもりはなくて自分の特性を考えて夢を諦めろとの『指導』。でもはっきりしているさらさには通じない
逆にはっきりしたさらさの意志が、同じように『指導』を受けた経験を持つリサの心情も変える展開は良いね
早くもさらさの良さが出ている
そしてさらさだけでなく愛も目立つ存在
聖の牽制球に対してはっきりとストレートを投げ返しているし、自己紹介の際に薫が「アイドルの事にも触れろ」と暗に促した際には薫が想定した以上の発言をしてみせた
ここで、薫は黙って愛と同じようにはっきりしているさらさだけが食い付いているのが面白い
けれど、今の所はやはりさらさの方が優勢なのかな?
裏方からは元アイドルの愛が注目されるけど、同じくらいさらさも注目されている
そして、迷い込んだ舞台で勘違いとはいえ、さらさに向けてスポットライトが照らされた。はっきりした存在が更に周囲より目立ち映える光景
あの場面からは主役としての性質を既に備えているように思えるね
役者怪我で主人公が劇に突如投入されるって定番ネタだけど、本作の場合はカタリナは台詞も覚えられないし他のメンバーはカタリナを巡って私情ダダ漏れの有様。
だけど、これはこれで非常に面白い光景となっているね
学園祭で生徒会主催の演劇であれば、来場者を楽しませる事を真っ先に考えなければいけない筈なのに、私情優先な面々
長靴借りてウキウキのマリアとかニコルの為に筋書き変えるソフィアもニコル投入で焦る男性陣も、お客よりカタリナを優先してしまうのが本当にらしいというか
その中で劇を成功させようとするカタリナが無邪気で暢気に見えてしまうおかしさ(笑)
台詞は飛んでるし筋書きは変わってるし当初の予定からは大きく変わった劇の形
それでもお客は大盛り上がりで家族も喜んでいるし最高の学園祭になった。トラブルがあっても終わり良ければ全て良し。なら、学園祭がもう少しで終わるタイミングでカタリナに迫る魔の手は学園祭の楽しさをどう変えてしまうのだろうか?というか、これが新たな破滅フラグ?
この第二期が始まるまでにあまりにも多くの事が起こった本作
だというのにそれらを感じさせない底抜けの明るさがOPから伝わってくるね。勿論そこには少しの寂しさも有るのだけど
第二期になっても変わらず人とドラゴンという異なる種族の交流が描かれるようで既に期待大ですよ!
メイド喫茶で働く事になったトール。コック長として多大な評価を得ているのにメイドというラベルを求めて奮闘する様は面白い
けれど、そもそも小林以外のメイドをしたくないトールはサービス業の何たるかを全く理解していないね。結局はメイドというラベルに釣られただけだったという(笑)
トールとイルルは混沌勢。だから調和勢のエルマは参戦しない。でも、それじゃあ小林は大切なトールを守れない
トールは守る使命を忘れ混沌勢の戦いをしそうになっていた。それを小林がエルマに調和勢としての壁を越えさせつつ、トールには壁を越えないようにしてやった
結果としてトールはメイドとして小林の隣に戻れたわけだね
イルルには二人が人間とドラゴンに思えるから、隣に居る事に納得できない
小林にとって自分達は小林とトールだから隣に居るのを間違いと思わない
違いが有るから傷を生むと考えるイルルと違いが有るから絆を生むと考える小林
両者には考え方の違いが有るけれど、一方でこれは人とドラゴンによる違いではなく、小林とイルルの違いなんだよね
この対話が既にラベルを越えたものになりかけている
イルルが仕掛けた驚きの罠は小林の欲望を曝け出そうとするもの
ラベル通りに考えるなら、男性となった小林がトールに欲情するのはおかしな事ではないけど、それはイルルのラベルで判断する考え方を肯定してしまうものになる
次回は小林にとって奇妙な試練となりそうだ(笑)
同好会だけでなく他校も巻き込んだフェスの開始!
だというのに共通衣装ではなく個別衣装で別々のステージで歌い踊る同好会の面々には驚かされるね
でも、それは本作が大事にしていたバラバラを尊重したもの。一方で曲を繋ぎ一体感を出す演出は素晴らしいね
侑が夢見た素晴らしいフェス。でも、侑はアイドル達を応援する立場だからライブを見ずにスタッフ業務。アイドルが大好きだけど、アイドルの道を選ばずに応援する道を選んだ侑にとってはいつもの光景
その中でふと零した夢を目指す言葉は、侑がアイドルを応援する立場のみで立っている訳ではない点が見えてくるね
盛り上がっていたのに雨で中止となったステージ。これはアイドルを応援する侑にもどうにも出来ないこと
ここで副会長や他のファン達がライブを繋ぐ展開は素晴らしいね。今や歩夢達を応援するのは侑だけじゃないからあのような光景を生み出せる
そしてファンによってステージに押し上げられたアイドル達が述べるのはファンを応援する言葉
ファンがアイドルを応援してステージを輝かせて、アイドルがファンの夢を応援して世界全てを輝かせて
応援する立場だった侑がファンとしてステージを楽しんだ。それが自分の夢へ進む原動力となるわけだね
バラバラであることが十人十色の輝きを生み出し、それがファンにも侑にも波及していく。素晴らしい連鎖を幾つも描いた作品だったね
「あの時ああしていれば」なんて後悔は永きに渡って抱え続けるものだし、それを問題の原因に結び付けがちだったりする
それを思えば恭也が過去に戻れた不思議現象よりも進路のやり直しを優先しているのは納得しやすい
一方でそのやる気が簡単に結果に結び付きそうにない点は進む道の厳しさも感じれるね
芸大に進まなかった事を後悔する恭也に舞い込んだドラマみたいなチャンス
雑用始まりなのに、あっという間にチームの信頼と役割を勝ち取っていく様子はサクセスストーリーじみている
でも、それはソーシャルゲームの隆盛という時代の変化によってあっさり崩壊。
恭也の活動開始が遅すぎたのだと暗に宣告するかのような無慈悲な運命
だから恭也が後悔しない道で活躍を目指すのなら、やはり進路選択の瞬間まで戻るしかなかったという事なのだろうね。だからって何の脈絡もなく戻れてしまうのは何とも言い難いけど……
ただ、それだって簡単には行かないのだと判る後半の内容は心に来るね
道を選べはした。本当の問題はその選んだ道の先で何をするのかという点になってくる
恭也は過去に戻って人生をやり直す事になるわけだけど、恭也がすべきは人生のリテイクでもリライフでもないんだよね。
クリエイターを目指す彼に求められたのは、それを勝ち取る為に自身を作り直すリメイク。その為の学校生活
だから自分には何が出来るのか、何をしたいのかと改めて悩む事になる
それにしても恭也の同級生達は才能の片鱗を見せつける者ばかりだね
既に一言持つ河瀬川は言うに及ばず、貫之も亜貴も将来の活躍を期待させる、もしくは約束された将来が垣間見える実力を持っている、正しくプラチナ世代
恭也は彼女らに関われただけで満足な人生になるのか、それとも恭也自身もプラチナ世代の仲間入りができるのか。それこそこの先の努力次第となってくるのだろうね
久方ぶりの本作。いきなり大事件が起きるというわけでもなく、第一期に作られた人間関係や雰囲気を丁寧に、それでいて小気味良いテンポで展開する内容は見ていて非常に楽しめるものになっているね
というか、何度も笑ってしまうね!
普通、鈍感系主人公って視聴者から嫌われやすいタイプだと思うんだけど、カタリナの場合は自分に向けられる好意に全く気付かない所か、色気より食い気が明確になっている為に周囲の牽制を含んだドタバタを嫌味なく見ていられる作りになっているのは好印象
想い合っていると勘違いされて目が死んでるキースとメアリには笑ってしまう
カタリナは友情エンドを迎えたと思ってすっかり油断。新しく登場した人物達も今の所は怪しい人物は居ない
けれど、カタリナならそういった安心を壊して破滅フラグを引き寄せてしまうのだろうな(笑)
演劇に巻き込まれた事で新たな破滅フラグが始まるのか、ただのトラブルに終わるのか
どちらにせよ賑やかな騒動が繰り広げられそうだ
透と夾が離れる事を契機として描かれる幾つものお別れ。別れがあれば出会いがある。この最終回で描かれるのはこれまでの日々へのお別れと新しい日々との出会いかな
神様と十二支の宴は終わり、互いを愛し幸福を願い合う宴が始まったのだと感じられる内容だったね
夾が猫憑きの因縁を引き裂くように捨てた数珠を拾う透
夾からすれば自分を縛り付ける物を剥がし自由を得る行動。けれど夾の過去だって透には愛すべき相手。捨てる対象にはならない
同じように、透と夾はこの街から離れるわけだけど、それによって繋がりを捨てるわけではなく、離れても消えない繋がりを大切に抱いていくつもりなのだと伝わってくる会話ばかり
透と夾の門出に対して、様々な言葉を述べる十二支や友人達
二人が居なくなる事を寂しがりつつ、二人の旅立ちを祝っている。燈路の「いっぱい泣いちゃえ」、紅葉の「これからも笑ってくれてなきゃ嫌だ」という台詞はとても良いね
彼らから透がどれほど愛されているかが伝わってくる
透と由希の会話。これは一緒に過ごした日々が終わるお別れ前の会話だから感謝の気持ちが籠められている。一方で新たな始まり前の会話だから、これまでは言えなかった秘した想いを口にする
終わりと始まり、そして感謝の気持ちをこれでもかと籠めた由希の台詞は透を送り出すのにとても相応しい言葉だね
そして辿り着いた幸福な未来の光景。まるで童話のようなめでたしめでたしの最終回
10年以上前に原作を読んだけど、再びのアニメ化なんて望めないと思っていた。だからこそ、この幸せな光景を今見られた事に感無量となってしまうし、これを実現してくれた数多のスタッフさん達には無上の感謝を捧げたくなる
このような素晴らしい作品を作ってくださり本当に有難うございました
バラバラな好きを肯定してここまで来た同好会。それが侑と歩夢の二人の関係をバラバラにしてしまうとは……
侑は歩夢が居たから、歩夢は侑が居たから歩み出せた。だから心が離れ離れになってしまうと二人共動けなくなってしまう
それでもフェスティバルに向け賑やかになる周囲は二人が動かずにいることを許してはくれない
侑は他校との調整をしなければならないし、歩夢は自分を推す今日子達とステージを作り上げないといけない
だからこそ、心が動けないでいる自分自身に忸怩たる思いを抱いてしまうのだろうね
きっと侑にとっては予想以上だった歩夢の拒絶反応。一緒に歩んで来た二人だから一緒に歩めない状況に対処できない。他のアプローチを必要とする
歩夢は一度停止しかけた大好きを再び動かしたせつ菜と、侑は歩夢の為にステージを作り上げようとする今日子達と
二人以外の絆を介して途切れかけた侑と歩夢の繋がりを復活させる流れは良いね
侑が今日子達と作り上げたステージは歩夢に相応しい物は何かと真剣に考えた証であり、歩夢への想いが何一つ変わっていないという証明になる物
バスには乗らず、手を繋ぎ同じペースで道を歩めるようになった二人
そして二人の夢が始まった場所で再び行われるライブ。ここで侑は歩夢をアイドルとして見上げるのではなく、親友として見守っているように感じられたね
歩夢が居たから音楽への道を歩みだそうと思えた侑
侑が居たからアイドルとして歌うと決意できた歩夢
「今まで有難う」で一区切りをつけて、「これからも」「宜しくね」で新たな歩みを始めた二人の様子は本当に尊いものに見えたね
それにしても……
侑と歩夢はそれなりにシリアスな空気感なのに、そんな状況を全く知らずにかすみを中心としてギャグ空間を形成してくれる同好会には本当に癒やされますよ……
次々と呼び出される仲間にイジケて特訓魂を燃やしたというのに、自分が呼ばれた途端に泣いて喜ぶかすみは本当に癒やしの存在です(笑)
まさか本当に鹿児島まで行ってしまうとは……。その行動力には毎回驚かされる
桜を目指して南下する旅。温かい土地を目指したそれは同時に椎の心を温めるものになったようで
鹿児島を目指す長い旅。それは単純に長距離をカブに乗って移動するだけのものにならず、カブ乗りとしての心構えやカフェ経営の参考、琵琶湖の素晴らしい夜景を見せるものになる
それらは川に落ちて身体も心も冷えた椎の芯に熱を加えるものになる
遂に辿り着いた満開の桜。そこから椎が持ち帰ったのは桜の花びらだけでなく、カブに乗って最南端を目指した経験、そして旅の中で受け取った数々の熱。だから地元に戻れば鹿児島と同じように桜が咲いていたのかもしれないね
椎は無事、春になれた
小熊と同じようにカブに魅了された椎の姿にはちょっと吃驚。小熊にとってカブ仲間が増えたのは喜ばしいことだろうね
ないない尽くしだった少女がカブとの出会いをきっかけに世界を広げ、繋がりを広げ、自信と経験を広くした
カブという存在との出会いを契機とした変化をここまで描いてみせた本作には色々な意味で驚かされる3ヶ月間だったね
絆の呪いが解け自由となった事は繋がりの解消すら意味してしまうかもしれない。集いで由希が心配していたのはその点だね
けれど、十二支達を結び付けていたのは呪いだけではないし、十二支は十二支以外とも絆を作っていた。だから繋がりが消えることはないと見えてくる回だったね
由希は呪いの件があるから真知へ想いを告げるのを躊躇し、それは縛りとなっていた。だからこそ、呪いによる繋がりの消失に涙を流しつつもそれによって得られた自由を喜ぶ
何度でも名前を呼んでと要求する由希。それは真知から名前を呼ばれる事で真知との絆を確かなものとしようとしているようだったね
慊人は紫呉を絆が無くなれば自分なんて捨ててしまうだろうと恐れていた
でも、紫呉にとっては呪いの絆など関係なく慊人が自分の元に来るのをずっと待っていたんだよね
慊人はもう呪いで紫呉を縛り付けられない。かといって女として欲を言葉にする事も出来ないから当主の役目で紫呉を求める
でも、紫呉にとっては慊人が自分を求めるなら理由は何でもいいのかもしれないね。まるで悪魔のような愛の注ぎ方ですよ……
猫憑きの呪いが解けた夾の未来は自由に満ちている。師匠の跡を継ぎたいと希望を語れるのは明るい変化
でも、その道を選んだら今の繋がりから離れてしまう。共に来て欲しいと告げる透にも同様に求める事になる
それでも絶対に譲れない絆を求めて同じ道を歩むと決めた透の姿は逞しいし、それを受けて約束をする夾の姿は格好良いね
明かされる「許さないから」の真相
透と夾がその意味を知る事はないけれど、夾は良い経験も悪い経験も蓄積する気になったし、透は憎しみは無いと信じている。真相が伝わらなくても夾は今日子との約束を受け取れている
約束が叶い、そして現世の束縛から解き放たれ、先に死の世界に旅立っていた勝也と再会できた今日子は最上の幸福を手に入れられたと言えるのかもしれないね
フェスティバルに向け同好会は上手く回り始めている。なのにずれを見せ始める侑と歩夢
最初は侑と歩夢の二人でアイドルへの道を歩み始めた。歩夢は侑との好きを重視したのに対して、侑は歩夢との好きを土台に更に好きの輪を広げてしまった。だから二人にずれが生じてしまったのだろうね
フェスティバル会場決めの為に街を巡る同好会。ここまで来てもやりたい事がバラバラなのは本当にらしいね。
そうして見えてくるのはやりたい事を統一せずバラバラである事こそフェスティバルの目指す方向ではないかという点。バラバラが逆に皆の好きを肯定する土台になる
一方で好きを統一しない事が侑と歩夢をバラバラにしていく流れが憎い……
今の侑が目指す方向性はどちらかと言うとせつ菜に近いね
自分の好きを侑や皆に知って貰いたくてアイドルを始めた歩夢と、自分や皆の大好きを肯定したくてアイドルを続けたせつ菜
アイドルを好きだという気持ちから同好会に入った侑が今や皆の好きを体現する場所を作ろうとしている
だから侑と歩夢は同じバスに乗れず、標識が示す行く先は異なってしまう
今の侑が何をしているか歩夢は知らない。むしろピアノの件でせつ菜の方が侑をよく知っているように見えてしまう
好きがバラバラなままなら本当に二人は離れ離れになってしまうかもしれない。それを嫌がった歩夢が口にした独占欲のような我儘
好きの和を大きく広げようとしている侑にとって難しい分岐点となりそうだ
松本博士を見捨てトァクを選んだヴィヴィが語るのは未来への最善の道。既に何が起きるか知っている彼女にアーカイブ対策の不安は無い
問題となってくるのは果たしてヴィヴィは人の為に歌えるのかという点。そこに物語の焦点が集められた最終話は美しいものだったね
マツモトとヴィヴィの会話。それは最終決戦前の確認であると共に100年の旅の集大成
マツモトは当初、ディーヴァの歌ではなく100年後に辿り着いた点のみを買っていた。だというのに今はヴィヴィの歌を聞けないと残念がっている
また、珍しい冗句や額を突き合わせての静かな別離など、それらの描写は彼女らが長い旅の間に手にした変化であり友情なのだと思えた
ステージを前にナビが突きつけて来るのはディーヴァとして有るべき姿と原初の約束。ヴィヴィはそれを忘れたわけではないけれど、今のヴィヴィの使命は小さいステージで歌えば良いものではなくなっていたから背を向けるしか無い
モモカがディーヴァに歌姫としての役割を明確にさせた。一方でヴィヴィと名付けた事が歌姫の役割から脱却させたのは今思えば皮肉な話
ヴィヴィが長い旅の果てに見出した「心を籠めるとは?」の答え。それは悲しい出来事ばかりが記録されたアーカイブへの反論となるのは良い展開だね
また、これまで伏せられていたヴィヴィが創造した楽曲を披露するには最高の展開
でも、同時にそれがAIの終わりでもあるのは寂しさを覚えてしまうね……
100年の旅にてヴィヴィが目指したのは人とAIの対立を防ぐこと
それは最終話にて花開くね。垣谷のように変わりたいと願うトァク、エリザベスと共闘する人間達、人間とAIは一緒に歩いていくべきだとユイに同意するヴィヴィ
その果てに表現されたのがEDの男性。正史ではヴィヴィを恐れ逃げた事で死を迎えた彼が、EDではAIを蹴りつける男を止めている
それこそがヴィヴィの旅の成果であるように思えた
そういった変化が結びついたのがエピローグなのだろうね
ヴィヴィはプログラムによって停止した。だからあれは別のヴィヴィなのかな?
それでもヴィヴィの復活と歌を望む聴衆が居るなら、そこにAIへの憎しみはきっと無い。AIを破壊する為に戦ったヴィヴィが純粋に皆を幸せにする為に歌う事が出来る
それはとても明確なハッピーエンドであるように受け取れたね
ファイドの停止から始まる最終話はやはりスピアヘッドの終焉が描かれるものに
そんな時に訪れた学校跡はクレナ達の子供らしさを強調するとともに、彼女らにとってそこが学びの場ではなく戦地における休息地にしかならない点が露わになる流れは残酷
食料は限界を迎え最後のドロップは口に含まれハイキングの終わりが訪れた
でも前には進めるから彼らは運命共同体で居られた。けれど、その中でシンエイだけは別の運命も見通す事が出来た
絶対的な死と高確率の死。それらを並べた時にシンエイが願ったのは仲間が僅かでも生き残る可能性
それは死神が役割を放棄した瞬間なのかもしれない
でも、ライデン達にとって変わらずシンエイは運命共同体だから見捨てるなんて出来ない
だから戦場に立つのだけど、唯の歩兵でしか無い彼らは囮にも成れず散るのみ……
馬鹿だけれど最後は一緒に散った彼らは本当に死んでしまったのだろうか?そしてラストの首なしはやはり……
それだけにようやく隔絶を越えて86の拠点まで辿り着いたレーナには驚かされる
既にスピアヘッドは居ない。それでも彼らの痕跡を探し続けた彼女に褒美の如く与えられたスピアヘッドとの対面
一方でこれがレーナにとってはゴールではなく、長い長いスタート地点に立ったのだと判るラストはいずれ来る続編を期待させるものだったね
街を破壊する怪獣優生思想操る大怪獣。これは本来ガウマが対峙する筈の因縁
正義の味方でも何でも無い蓬達が戦う事になったのは偏にガウマとの絆があったから。そういった繋がりこそシズムが否定する縛りであり、繋がりこそ蓬が肯定した不自由だったのかもしれないね
瀕死でありながら戦場に来たガウマは最初「詫びと礼を入れに来た」と告げたが事情を知らない暦には通じない。だから代わりに「余計な真似をしに来た」と言い換える
その瞬間に彼らが戦う理由はガウマの因縁によるものではなく、自分に出来る事をするという単純なものになる
だから出自も背景も異なる者達が合体できる
蓬達も、そして怪獣優生思想も全ての力と思いの丈を込めての最終決戦は迫力に満ちていたね
カイゼルグリッドナイトだけでなくダイナゼノンもダイナレックスも総動員しての全力勝負!からのグリッドナイトと力を合わせた、前作ラストを思い出させるような最後のパンチは気持ちいいものだったね
シズムが目指したものが縛られ無い状態であるなら、蓬が手にしたのは縛られ有る状態
縛りがあれば思うように行かない事なんて幾らでもある。南さん係になってしまった蓬とか、コスプレ喫茶に後ろ向きな夢芽とか
それでもその状態は無いではなく有るなのだから、それはきっと自分の何かを満たしてくれる
怪獣は今度こそ居なくなり、ナイトやゴルドバーンも去った日常。そこで蓬達に残ったのはガウマによって齎された絆と思い出
本来は否定的な意味で使われることが多い痕が、蓬達が手にしたかけがえない絆を証明する一助となる
記念写真の後に互いの顔を見て吹き出してしまう二人の様子からは彼らが手にした不自由な平和の尊さを感じられたね
停滞の終わり、歩みだしの始まり
沢山走ってようやく話し合えた夾と透。透は夾の発言で関係が終わったと感じた。終わったなら終わったものとして引きずってはいけないと思ってしまった
その認識は間違いだと透に万感の思いと共に伝えた夾の言葉は良かったね
夾は透の事故で大切な人を突如失う理不尽さを思い出した。理不尽さは何もかも終わらせてしまう事を思い出した
だから夾は透を傷つける時間は終わらせると宣言した。透と共に居る日々を始めたいと言った
終わりが終わって、始まりが始まるとても尊い一瞬
それがまた別の終りと始まりを呼び寄せる流れは何と表現するのが良いのか……
十二支の宴は終わり絆は消えた。十二支だった者達は大切にしたい者達との絆を本当の意味で始められた
それは哀しいのだけど、同時に喜びも含んでいる。だから複雑な感情に涙を流してしまうのかもしれない
孤独を厭い動物達との不変を求めた神様
終わりを受け入れるのは恐ろしい。だから終わりのない日々を求めてしまう。でも、猫が求めたのは終わりの後の始まりなんだよね
でも、かつて楽しくない日々があって今が楽しい者にとっては簡単に受け入れられる言葉ではない
受け入れるにしたってとても長い時が掛かる
そう考えるとこの物語は神様が不変の日々から抜け出して、新たな始まりを受け入れるまでの物語だったのかもしれない
慊人が自分の意志で宴を終わらせて、十二支達に新しい人生を始められるようにした
一方で、それは慊人自身にも新しい始まりを手に入れさせるのだと、抱き合う透と慊人を見て思ってしまった
個別エピソードが終わった事で始まる全体エピソード&合宿!……の筈が和気藹々とした旅行みたいになってしまうのは流石に如何なものかと思うけど、こうして皆で一緒に居る時間を最大限に楽しんでいるからこそ、同好会の纏まりは成立しているのかもしれないね
遊び要素に夢中になり過ぎて疎かになりそうな練習要素に目を向けさせるのがせつ菜の役目であるのはいつもどおりなんだけど、そこで侑も同好会の方向性に目を向けさせるような発言をちょくちょくしている点には注目してしまう
今の同好会を引っ張っている存在はせつ菜と侑で有ることが判る
そしてせつ菜と侑は夢や遣りたい事の後押しを互いにしている
侑はせつ菜のステージを見たからアイドルを応援したい夢が始まって、せつ菜は侑に応援されたからステージに立つことが出来た
今の二人はとても良いパートナーとなっている
……だからそんな二人を見て歩夢が表情を曇らせてしまうのはある意味当然だったのかもしれない
侑とせつ菜の夢を中心としてバラバラだった個性の集いである同好会は纏まり始めた。けれど、歩夢は……
二人の思い出を二人のものと考えていた歩夢と二人の思い出があったから繋がりの輪が広がったと考える侑
同好会としては纏まりつつも、侑と歩夢の心が離れつつ有るのが気になるね…
AIを特別な存在にしない、人類とAIをいかに対立させないかという点に注力してきた旅の終わりに示されたものが人類よりAIの方が優れているという結論になるとは……
使命の拡張がヴィヴィにAIを滅ぼす力を持たせたけど、アーカイブは人類を滅ぼす力を持ってしまったのか
シンギュラリティ計画とはAI史における転換点の是正が求められた計画だった。今回、ヴィヴィに求められたのは人類を生かすべきか、滅ぼすべきかという究極の選択
転換点を防いできた彼女こそが、転換点になってしまうという皮肉
けれど歌の使命をディーヴァと共に失ってしまったヴィヴィにはもう歌はないから選択は難しい
改めてヴィヴィが悩む「心を籠めるとは?」。それは様々な形で問われ様々な答えが返ってきたね。
歴史の修正という大事業にヴィヴィを選んだ理由を君しか考えられなかったと答えた博士
自分はマスターの為に稼働するだけだと答えたエリザベス
不自由な足こそAIとの共存の証だと答えたユイ
それらの答えには彼女らなりの心が籠められている
そして共に旅してきたマツモトの答えは博士と似たようなものだけれど、旅の始まりには無機質で皮肉屋なAIで在った彼が切々と訴える旅の相方がヴィヴィでならなかった理由。そしてヴィヴィが成し遂げた旅の成果と使命
彼が改めて突きつけるからヴィヴィは「心を籠めるとは?」の答えへの道が導き出せる
最後のチャンスとしてやり直しの機会を得たヴィヴィ。でも、それは大切な博士を見捨てなければ得られないチャンス。だから何がどう有っても誰もを幸せに出来ないと確定している道
その道の中で「歌で皆を幸せにする」使命を持つヴィヴィもしくはディーヴァは、長い旅の終わりとしてその歌を用いてどのような未来を選び取るのだろうか
自由になっても限られた資源の中では進める距離も限られる。
そんなシンエイ達を立ち止まらせた大きな川。それはまるで三途の川を前にして逝くか戻るかの選択を突きつけられているかのよう
レーナは登場しなかったけど、それは今回の内容が死者の国に程近い場所で繰り広げられる関係だろうか
死の任務を潜り抜け兄を弔った今のシンエイはどこか空虚。でも、その空虚さが年相応の少年さも見せているようで複雑になる……
他のスピアヘッド隊員達は少年少女らしさを持ちつつ日常の中に死の戦争を組み込んでいたように思うのだけど、兄に殺されたかけたシンエイは最初から死の国に半身を置いていた
兄の呪縛から開放された事でシンエイの心の行く先は無くなってしまったのだろうか
それでもシンエイが生きている自分を預けられる存在となったのがレーナの筈なのだけど、彼女とは完全に離れてしまった。だから今のシンエイは生に背を向けて死に歩いているようなものなのかもしれない
これまで86の仲間達を葬送していたのはレギオンに脳を取られない為だったけど、今回の葬送はそれとは別。完全にシンエイが死神となってしまったように感じられたよ
シンエイやスピアヘッドを最初からずっと見守り続けたファイド
彼の中に留められた記録は戦いに身を置くしか無かった86がいかに普通の少年少女であるかを教えてくれると同時に、厳しさを増す戦況の中で少年少女が何を失っていったのかが判るようになっている
いわばスピアヘッドの生き字引であるファイドが壊れる時は即ちスピアヘッド崩壊の時であるように思えてしまうが……
今回、多くの場面で描かれるのは怪獣を倒し尽くした世界の様子。情動によって生まれる怪獣が出現しないから、これまで戦いの日々に身を置いていた暦達も思い出したように日常へ戻ろうとしている
それは有るべき、正しい形への回帰なのだろうね
物語の始まりであるガウマ自身もあるべき形に囚われた人物だったのかも
将来を誓った姫が自分に会いたくて死んだと言うならガウマが姫を求めて現代を彷徨うのは当然だったのかもしれない。でも、姫に会えないならミイラから蘇った彼がいつまでも活動し続けるのはおかしく、ミイラに戻るべきなのかもしれない
だから不調の度合いを濃くしているのかな
暦は就活、夢芽は謝罪、ナイト達は去る…。怪獣優生思想も目立った格好の迷惑な人達に。その流れに倣うようにちせも中学へ行こうとするけど、それは未遂に終わる
怪獣であるゴルドバーンを友と出来て、学校に馴染むことも出来なかったちせにとっては正しい世の中の方が馴染めない世界なのだろうね
ちせが馴染めないように暦や夢芽も思う所があるようで
特に夢芽の様子は印象的。ようやく香乃の墓参りをして、蓬と親への不満を共有して。更にこれまでも蓬達と何度も楽しい思いをしてきた。それはとても普通の姿
でも、それらは怪獣が出現したから出来た事でも有る
そんな危うい夢芽を告白によって自分達の世界に引き寄せようとする蓬の行為は良かったね
怪獣は居なくなり、正しい形の世界へ向けて変化を重ねていく蓬達を切り裂くようにして正体を表したシズム
怪獣は自由であるべきと考える彼は街をどれだけ壊してしまうのか、そして蓬達は守りたいものをどれだけ守れるのか
いよいよ最終局面に突入したと感じられるラストだったね
冬の試練はその長さにあるという事だけど、その意味は冬の厳しさに一つの対策を立ててもまた次の厳しさがやってくるという意味なのだろうね
寒さ対策が完了したと思ったら次は積雪ですか。カブ乗りにとって冬がいかに厳しい季節か伝わってくる描写ばかり
雪道を走る小熊の様子は非常に危なっかしい。重大な事故でも起きるんじゃないかとハラハラさせられる程
だからこそ、その後に登場するタイヤチェーンの頼もしさったらないね。そりゃ礼子も小熊もテンションが上がって雪中で遊び尽くしてしまうというもの
厳しい冬であろうがカブで楽しみ尽くす二人の様子は輝いている。そんな二人に影響されて椎が走る楽しみに目覚めるのは納得の展開。更にイタリアの領土拡大計画も順調に進んでいる点は微笑ましいね
でも小熊達の楽しいカブ生活は様々な冬対策の上に立脚する楽しさなわけで…
危機的状況に陥ってしまった椎の為に小熊が出来る事は何があるのだろう……
慊人は変わり罪を認めた。夾は透が大切だと気付いてしまった
それらの変化は停滞していたら訪れなかったもの
物語が終盤に入った事を示すかのように、今回は夾を中心として自分を変えようと一歩を踏み出す者達が目立った印象だね
慊人の為に慊人の前から居なくなろうとする紅野。それはこれまでと何も変わらない、歩いているけど停滞し続けるような後ろ向きな行動
この意味をありさは変えてみせたね
いつか二人が再会する為の歩みだしに変えてみせた。そうすることでありさは紅野の人生に関わると決めたのだろうね
助かった透に会いに行けない夾。それは臆病から来る停滞
夾からすれば自分より数多くを持っている由希の方が透を守れるだろうと考える。だから由希になりたかったなんて言ってしまう
でも、由希からすれば夾こそ透をきちんと守ってきたように思える
一時期、透を女性として見ようとしていた由希だからこそ、夾にしか出来ない関わり方に焦がれる面があるのかもしれない
由希の激昂は夾が何もしていない、停滞していた訳ではないと教えてくれるもの
そうして歩き出してみれば実は自分を呪縛していた父親こそ停滞していたという事実に出会う。そして母が感じただろう絶望も知る
そうして夾は漸くにして自分の人生に責任を持ち、生きて歩み続けようと思えたのかな
草摩に囚われた女中を置いて歩む慊人、真知に会いたくて駆け出す由希
それらはきっと明るい明日に続いている
同じように夾も透の居る場所へ歩き出した。だから再会した瞬間に本心が明瞭となる。それを自覚できたなら夾はもう逃げないし逃さない。変化への歩みだしを更に始められる
それが勢い良すぎて透共々全力疾走になってるのは笑ってしまうけども
これまで個別エピソードを積み重ねてきた本作。仕上げとなったのは同好会の代表としてステージに立つ事を意識した状態でのソロライブ
そこには責任やプレッシャーが伴う。だから生半可な覚悟では挑めない
今回は果林や同好会の絆が見えるエピソードとなったね
誰がステージに立つのか、と選ぶ段での果林の言葉は厳しい。それは3年生としての責任も感じさせるし、既にモデルとして活動している実績に基づく認識も有るのだろうね
ただ、あの場では果林がはっきり言い過ぎたせいで果林がハズレくじを引いてしまった感もある。それをきちんとフォローする後の場面や侑の発言は良いね
果林はしっかりしているように見えて実は方向音痴な側面が見えたり、他のメンバーに追いつくためにこっそり練習していたり
仲間たちに物を言うだけの努力をしているし、時には仲間の助言が必要なタイプである点も見えてくるよう
だから、侑達は果林が忠告してくれた事に感謝を伝えられるし、同好会がステップアップする為に皆で相談しあおうと提案できるのだろうね
代表としてステージに立つ事になった果林。一人だからプレッシャーに一人で立ち向かわなければならないように思えてしまう
でも、同好会の代表として立つならそこには支えてくれる仲間がいる。そして仲間達はライバルだから、情けない姿は見せたくないと思う
果林も、そして同好会も大きく成長した話となったようだね
ああ、いつの間にか審判の日になっていたのか
ヴィヴィとマツモトが100年掛けても変えられなかったものを既に戦争が始まってしまった段階から何かを変えられるのだろうか、と思ってしまう程に絶望的な状況ですよ……
変わらなかった悲劇が目に付いてしまうけれど、一方で変わったものも目立つようになっているね
博士は生存し、マツモトやエリザベスが存在する。何よりも100年を旅してきたヴィヴィが居る
それらは大きな惨劇の中で小さくても意味を持っているように思えてしまう
サルベージされたエリザベス。けれど今の彼女はサンライズ事件直前の状態。だから人間への対立意識を持った状態のままだった筈が垣谷の言葉が有ったから今は人間を助ける立場に変化している
そうして変わったエリザベスは今もエステラの最期を気にしていた。変わった彼女の変わらない部分が少し見えた気がしたね
そして……
正史から変わった存在、ヴィヴィとエリザベスが暴走していない事からマツモトや博士が物語の黒幕を暴き出す展開は良いね
「貴方を待っていた」と告げるアーカイブは何故人類を滅ぼそうとするのか。そこにAIと人類の対立は存在するのか。するのならば、ヴィヴィには何が出来るのか
ここから最終回までの話がどうなるのか楽しみだね
あれだけの拒絶と否定をされ、なおスピアヘッドの隣に立とうとしたレーナの覚悟には驚かされる……
レーナと86達の間には幾つもの隔絶が有った。それを乗り越える為にレーナが無意識の内に自分に設けていた壁すら取っ払ってしまう展開はクライマックス感があるね
レーナは道理を説いて86への非道を辞めさせようとした。けれど、共和国やレーナ自身に存在する無知が道理を通さなかった
ならレーナが道理を守る理由なんて何もない。失明の危険や無許可の迎撃砲、アンリエッタへの脅迫。とんでもなく馬鹿な行動だらけだけど、その馬鹿さは蔑まれる馬鹿さではなく誰かを救う本物の馬鹿となる
レーナが道理を破った事を起点に他の道理が破られる展開は爽快
ショーレイはシンエイへの殺意を滾らせていた。だからシンエイも殺意を向け返し、それが二人の中での道理となった
けれど砲弾から弟を守る兄となった事で道理は崩れ、殺し合いは弔いとなった
ショーレイを殺していたらシンエイは泣けなかった。兄として弔ったから顔や声を思い出し、そして泣くことが出来たのだろうね
隔絶を越え道理が崩れたレーナとシンエイ達の遣り取りは非常に穏やかなものとなったね
近くに居ないけど顔を書いたメモを並べた事でまるで向き合って会話しているかのよう
ただ、そこまで両者の関係が進展しても越えられなかった隔絶。どれだけ心が近くなったとしても両者はとても離れた場所にいるという物理的な隔絶は越えられない
シンエイ達は生き残って自由となり戦場の外へ旅立った。けれど、国という壁を越えられなかったレーナ置いてかれてしまう
ハッピーエンドの筈なのにどこか遣り切れないビターエンド
遠くにいる彼らの会話にレーナは混ざることは出来ず、どれだけ走っても追いつく事は出来ない。「先に行きます」という言葉を受けたレーナがこれから破らなければならない道理はどれ程存在するのだろう……