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良い

色々な意味で超展開
夾とは擦れ違い、凶刃を携えた慊人が迫る極限現状。そんな状態だから却って見えてくるものも有るのかもしれないと思えた
慊人の本当の心、夾が大切にしたい存在、そして……

小刀を向けて震える慊人の姿は恐ろしい。けれど一方でその言葉には駄々っ子のような弱さも見えてくる。また、大切な存在から置き去りにされる寂しさがこれでもかと見えてくる
そういった意味では透と慊人は似た部分がほんの少しあるんだよね。母に行かないでと言えなかった透も置き去りにされる寂しさを知っている

そんな透の言葉を前にしたから慊人もずっと隠してきた本心が口から出てしまったのだろうね
そうして耐えきれない程の寂しさを自覚してしまったから、透に差し出された手の尊さにも気付いてしまう。
慊人はこれまで十二支と神の絆によって寂しさを紛らわせようとしてきた。透が差し出したのは無償の愛。これこそ慊人がずっと欲してきたもの

透が崩れ落ちる展開は唐突
でも、似たような事は慊人の周りで何度も起こってきた。父の死、絆の消失、紅野への刃…
理不尽は唐突にやってくる。それに対し、今度は「助けて!」と言えた。きっとこの瞬間に慊人は変われたのかもしれない
だから紅野や透が示す馬鹿みたいな優しさに自分が包まれていたのだと気付ける

唐突に奪われる理不尽とそれを癒そうとする馬鹿みたいな優しさを理解できたなら、行動を変えるきっかけになるのかもしれない
一人でお見舞いにいって、そして透の差し出す手を掴むために彼女に会いに行った慊人の姿はまるで憑き物が落ちたかのよう

慊人は変わった。同じように唐突に奪われる理不尽を感じた筈の夾は変われるのだろうか?



とても良い

しずくの内面描写に思えていた自己との対話が舞台での一幕であるかのように演出される展開
それは本物と演技の境界が限りなく薄くなる今回の内容を示しているかのようだったね

相手に受け入れて貰えるようにと自己を否定する為に演技を始めたしずくにとって演技をしない自分を曝け出すのは非常に難しく恐ろしいこと
ここで印象的なのはしずくが演技をしていない自分を本物、演技をしている自分をしずくではないと二極的に捉えていること
だから演技の中で自分を曝け出せない

でも、演技をしていたら本物じゃないとか本当の自分とか実はとても曖昧な概念なんだよね
可愛いを追求するかすみはそのキャラ性故に否定的に捉えられることだって有るだろうし、璃奈なんて顔を隠してステージに上っている
そんな二人だからしずくの問題と彼女に必要な言葉が見えてくるのだろうね

教室の場面、面白いのはしずくを照らす日光がまるで舞台上の照明に思える点。また、しずくが自身の内面を明かす言葉もまるで舞台上の台詞かのよう
つまり、あの場面でしずくは無意識にかは不明だけれど「本物を曝け出す演技」を既にしている
それがかすみの「私可愛い!?」に引き込まれて舞台らしさが消えてしまう。何故ならかすみはしずくを頑固キャラだと捉えているから

しずくとしては自分が主役の場面なんだから自分の内面について触れてほしい。なのにかすみはその舞台を無視して自分の話をした。その上でしずくを大好きだと言ってみせた
もはや本物も舞台も滅茶苦茶
だからしずくは舞台上で本物と演技が混ざりあった姿を見せられる。それこそが本物の『桜坂しずく』となるのだろうね



とても良い

レーナはこれまで人々の無関心や無知にこそ86が迫害される原因があると考えてきた
それがアンリエッタやジェロームとの会話によってレーナにも無関心や無知があると突きつけられる展開には鳥肌が立つね……

以前の構図では86の苦境に対してレーナがあまりにも無知であった為に衝突や擦れ違いが生じ、それを真摯に相手に向き合う会話を続ける事で相互理解を深めていく流れだったように思う
両者の間には断絶が有る為にレーナが86の事情を知らないのだと
だと言うのに、この話で明かされたのはレーナは共和国の事情すら知らなかったという衝撃の展開

アンリエッタから突きつけられるのはレーナの無関心。レーナは普段使っているパラレイドがどのような犠牲によって作られたかなんて欠片も関心を向けていなかった
ジェロームから突きつけられるのはレーナの無知。レーナが正義の根拠と思い振りかざす共和国の理念がどれだけの欺瞞のもとに形作られているかなんて知りもしなかった
自分にこそ無関心と無知があったレーナの言葉からは力が失われてしまう

支援を約束していたスピアヘッドに出来る事はなく、ただシンエイに「戦わないで」と縋り付くだけ
ここでより悲しく思えてしまうのはシンエイが優しく接してくれる事だね
シンエイは自分の死を前にしてもそこには価値と自由があるかのように振る舞う。それどころか、レーナを心配する言葉まで使う
一緒に戦う筈だった二人の間には物理とも精神とも異なる隔絶が生まれてしまったように感じられた

自分達の足で処刑場に向かう残り少ない人数になったスピアヘッド。それを待ち構えるショーレイの亡霊
もはやレーナに出来ることは何もないのか?スピアヘッドはただ死ぬことしか出来ないのか?
改めてレーナとシンエイ達が全く別の場所に身を置いている事実にやり切れなさを覚えてしまうラストだった



良い

フロート事件の際にディーヴァとヴィヴィを分離し、ディーヴァと共に使命を喪失した今の彼女はいわば生きる目的を失ってしまったようなもの
だから飾られる人形となり、マツモトから計画に誘われるのを待っていた
そうでないと彼女には何か行動を起こす理由すらなかったのだろうね

そこでマツモトが与えたものは面白いね
行動理由が無いのなら、新たな目標を与えてやればいい。そこへ更にオサム少年との競争も重なったことでヴィヴィの内面が再び活動を始められたのだろうね
ただ、指向性の無い目標だけでは完全な再始動には至らなかったようだけど

誰の為、何の為。それを思い浮かべられないからヴィヴィはひたすら自分の中に潜り続ける
そこへオサムから聞いた話がヴィヴィを本当の意味で生き返らせるきっかけとなる流れはいいね
人はいずれ死ぬが誰かの中に残る。同じようにヴィヴィの中には多くのAIとの記憶が残っている

9話でディーヴァは歌に自分の全てを込めると言っていた
今のヴィヴィは歌えなくてもその中には80年間を超える旅で出会った様々が詰まっている
だから彼女が自らの意思で作った曲はシンギュラリティ計画をなぞったものになるわけだね
……ここで終わっていればめでたしめでたしの物語になっただろうに

何もなくても平穏な変化を重ねる日々
そこへ突然訪れるAIの暴動。正史より10年程度早いAIの暴走は何が原因となり、そして時の流れに置いてけぼりにされていた為に暴走に巻き込まれなかったヴィヴィに何を求める事になるのだろう?



とても良い

7話でガウマが「バラバラだからこそ俺達は出逢えたんだ」と言ったようにこれまでは纏まりが無くても最終的に合体すれば問題は解決できていた
その路線では敵を倒せないとなった時、新しい力含めて全員合体する展開はとても熱いね!

ちせの元に突如現れたゴルドバーン
見た目や行動は怪獣なのだけれど、会話できた事からちせは保護を決める
けれど、怪獣を倒す為に戦うガウマ達にゴルドバーンの事は相談できない。暦にもガウマにも明かせず街を彷徨うちせの姿には彼女の孤独が感じられるね
チセはガウマ達からバラバラになってしまう

ようやく出逢えた双葉だけど彼の言葉は香乃の死の責任は自分にないと必死に言い聞かせているかのよう
また、今も夢芽は香乃の死に囚われているのに、双葉は結婚して香乃の事は過去の存在に
あまりにあまりな展開に夢芽は心がバラバラに砕け、戦ってきた意味すら見失ってしまったようで

そこへ5人の指針を示すのはやはりガウマの役目なのだろうね
戦力がバラバラな為に苦戦しているのに、夢芽を置いてきた蓬を叱咤して戻すし、ゴルドバーンについてもゴルドバーンを信じるちせ達の気持ちを信じて合体を受け入れる。また、一緒に戦ってきたグリッドナイトも受け入れる
その果てに出現したカイゼルグリッドナイトはカタルシスに溢れている

手掛かりは途切れ夢芽は香乃へ至る道を失ってしまった。だからって全てを失ったわけではないと判る蓬の行動は良かったね
ちせが言うように、香乃の事は判らないままでも今の夢芽は少し贅沢な身の上になりつつ有るのかもしれない
夏祭りが終わった後に繰り広げられた大切な仲間達による特別な祭り。時間を掛けても浴衣で参加した夢芽の姿には今を精一杯楽しもうとしている心意気が感じられたね



良い

冬が近づく寒々しい空気はカブ乗りにとって辛いもの
そのような環境だからこそ小熊や礼子を温める様々が優しく映るね

冬支度の為に必要な対策は幾つも有る。けれど苦学生である小熊はお金の使い途を計画的に考える必要がある
小熊達が椎の誘いに乗ったのはお礼として温かいコーヒーにタダでありつけるという考えからだね(笑)
でも、そこで口にしたコーヒーは小熊達が想像していた以上に身体と心を温めるものになったようで

第一話の時にも有った、心の転換点に差し掛かった時に色調が明るくなる演出はやはり良いね
今回はカブに乗っている時の変化ではない。それでも小熊の心が明るくなったのはまさしくあのコーヒーが飲む暖房として機能したからなのかな
寒い中を走るカフェまでの道。そこで口にしたコーヒーはただ美味しいだけではない温もりを与えてくれたのだろうね

温もりは何も物理的な熱だけを指しているのではなくて、時には心を興奮させる作用も温もりとなる
防寒グッズを探して入った筈の中古品店。なのに、礼子はモデルガンに釘付けとなり小熊は弁当箱を買ってしまった
本来の目的を置き去りにさせてしまう程に夢中にさせる諸々も心を温めてくれる

でも、この回で最も温もりに満ちていたのは椎のカフェだろうね
アメリカにドイツにイタリア。何もかもがごちゃまぜで統一感が無い。けれどそこは恵庭家の『好き』をこれでもかと詰め込んでいるのだと判る
だから、そこで働いている椎だって温もりの籠もった存在に見えてくるのだろうね

寒さのせいで懐は寒くなるばかり。これ以上寒くするなんて以ての外
これまでの小熊の価値観ではカフェでコーヒーを飲むなんてもっと懐を寒くする行為だった
それが椎の誘いによって価値観が変わった。ちょっとした贅沢で懐が寒くなったとしても心が温かくなると知った

今回のエピソードも小熊の世界が広がる様子が温かさに満ちた描かれ方をしていたね



良い

夾の独白によって紡がれる、透が知らなかった夾の苦しみ
生まれながらに猫憑きとして罪を糾弾されてきた彼の苦悩は計り知れない
ここで夾の境遇がより悲劇的に思えてしまうのは透との恋愛的距離感があと一歩の所だというタイミングで夾が過去を完全に思い出してしまった事だろうね

夾本人には何の落ち度も無いのに猫憑きであるというだけで母を不幸にし父から敵視された
師匠以外の全てが敵に見えていた幼少期の夾にとって、夾の寂しさを理解して普通に接してくれた今日子の存在はどれほど救いになったのだろうと考えてしまう

自分が救われたから相手を救いたいと思う。そこには今日子の娘である透も含むわけだね
だというのに救いたい相手は憎き鼠憑きが救ってしまった。更に今日子は夾が隠したい感情も詳らかにしてしまった
夾にとって自分は奪われる存在であり、認めて欲しい相手から否定されてしまったように感じられる日になってしまったのかな……

今日子を見捨て死なせた罪。それを受けて自分を追い詰めていた夾にとって、慊人からの賭けとその先で出会った透は天国と地獄が一度に訪れたようなもの
だから自分を少しでも守るために透には何も知られないでいて欲しかったのだろうけど、一方で自分を裁く為に透には真実を知って貰いたかったのだろうなとも思ってしまう

夾の独白を受けての透の発言が光るね
透は罪を裁くより自分の好きだという想いを優先し、母の言葉すら否定した
でも、罪よりも好きを主張する透の言葉は今の夾にとって受け入れられるものではない。だから夾は透にも、そして向き合えない自分にも幻滅してしまう
決定的なすれ違いを見せる透と夾、慊人の凶刃が迫る現状。何もかもが悪い方へ向かっている中で果たして救いは有るのだろうか……



良い

これまでは単純な居眠りキャラに見えていた彼方。けれど、その裏では夢を追うため家計を支えるため遥を助けるため奮闘していたようで
それは長女として当たり前の姿だったのかもしれないけど、今は彼方も遥も同じようにアイドルとして頑張っている
二人の境遇は瓜二つなのに彼方だけが遥を支えている

遥の決断は突然で極端。でも、あれっていずれ彼方がしていたかもしれない選択なんだよね。遥の決断を見て彼方が遥が辞めるくらいならいっそ自分がと思ったように、負担が大きすぎて遥を思うように助けられなくなったらいずれ彼方が決断していただろう事
それを遥が先んじて決断した

彼方も遥もとても似ている。似た意味を持つ名前であるだけに留まらず、境遇も夢も姉妹を想い合う様子も
それは本来なら素敵な関係の筈だけど、あまりに似ているから擦れ違う
だからあの局面で必要だったのは彼方が遥の想いを知ると同時に、遥に夢を追う気持ちは負けていないと見せる事だったのだろうね

似たもの姉妹は片方だけが支えるのではなく助け合う形に。そして姉と妹からアイドルの夢を追うライバルへ
これまでは似ているから衝突してしまった。でも並び立つ形なら支え合える
遥が作った卵焼きは不格好。でも、それを彼方は食べると言った。それに夕飯を作る際には助け合う約束までした
二人の姉妹愛が確かな成長を見せたエピソードだったね



良い

ここに来て明かされるスピアヘッドや86の真実に絶句してしまう
それでも、元から何処に希望があるのかと問いたくなる環境に身を置き続けた彼らが戦う理由には彼らなりの矜持を感じられるようだった

賄賂や贈答品を使ってまでスピアヘッドの為に花火を贈ろうとするレーナは生真面目というか何というか……
あれ、渡された方が困るやつでは(笑)
ただ、それだけレーナが困窮するスピアヘッドの為にあらゆる手を尽くそうとした証拠でもあるのだろうけど

でも真実を知らないレーナは相手にされない。ジェロームはワインを脇に置いてパーティへの参加を勧めるし、夢物語を語るレーナの誤りをスピアヘッドは指摘しない
パーティにも喪服のようなドレスを着て参加した挙げ句、シンエイとの話に夢中になってしまう彼女はとことん浮いている
今のレーナは一生懸命でも中途半端さが目立ってしまう

その一方でスピアヘッドとレーナの関係性は穏やかなものになりつつあるとも感じられたかな
クレナがレーナに真実を話した方が良いのではないかと気にするのは厄介払いではなくレーナを深入りさせない為
仲間が死んだ直後にレーナがお花畑でもセオトはいつかのように当たりはしなかった
それらからはレーナを真っ当に話す相手と認めているように感じられた

だからシンエイ達がレーナに真実が伝えたのは現実を教えると共に、自分達がどう生きたか知って欲しかったから、忘れないで欲しかったからなのかもしれない
己の矜持を語ったライデン。それは既に自分達の死を受け入れているようでも有る。レーナにはもう忘れないでいる以外に出来る事は無いのだろうか?



とても良い

垣谷とアントニオから見えてくるAIの使命と心の問題
垣谷は先生の使命を認めつつ心を尊重しない社会に反抗した。アントニオはオフィーリアの使命を叶えようとする自身の心を計り間違えた
彼らに対抗するディーヴァとマツモトにもAIとしての使命と心が見えてくるのは面白い構図

垣谷とアントニオ、二人は使命を研ぎ澄ますようにして望む答えを探すけれど、彼らが求める答えって既に存在しないんだよね
先生が苦しんだかどうかなんて他者に判る筈がない。オフィーリアが何を思って歌っていたなんて他者に判る筈がない
存在しないから、垣谷は似た言葉を使ったヴィヴィを求め、アントニオは自壊に至ってしまう

結局、アントニオは自分の手で一番大事なものを壊していたというのは悲しい話
彼はオフィーリアをサポートする使命に準じていたが、そこに自分の為だけに歌って欲しいという望みを含んでしまったが為に使命を超えた暴走をしてしまった
その暴走は心の存在を証明しているように思えてならないね

そしてディーヴァとマツモトは彼らが求める答えを持たないから自分のAIとしての使命と心を提示するしか無い
中でもマツモトの結論には驚かされたかも。時には足手纏い扱いしたヴィヴィをパートナーと認めた。自分の使命にヴィヴィの生存を含めた
だから7話でディーヴァを助け、今回もディーヴァの消失にショックを受けているのか……

また、永きを生きたディーヴァの結論には色々と思う所があるね
ヴィヴィはディーヴァの使命をヴィヴィの名で上書きしシンギュラリティ計画遂行の使命を実行後に使命の背反から崩壊してしまった
対してディーヴァはディーヴァのままに計画を遂行した。その上で歌姫としての使命も失わなかった
その理由はヴィヴィとの対話から「心を籠める」含め、答えが垣間見えた気がした

ディーヴァは歌に「知らない私自身の事も全て」籠めると言った。そしてヴィヴィには「私の歌に足りなかったものが見つかった」と言っている
ならディーヴァは、ディーヴァもヴィヴィも。そして歌姫の使命も計画遂行の使命も全てが己であると判断したのではないだろうか。だから背反も崩壊もしなかった
けれど、その心はヴィヴィに伝わらず。ディーヴァを失ったと感じる彼女が心を理解するのはいつになるのだろうね



良い

なんだろう……、とても不思議な回
怪獣は現れても実害ははっきりせず、怪獣を暴れさせる筈の優生思想は遊んで過ごす。夢芽の姉に関する手がかりは得られず、暦は八つ当たりの石も投げられない
何もかもがしっくり来ない

色を塗るだけの怪獣は巨大化しても積極的な破壊はしなかった。危険性が見えないから問答無用で殺す事への罪悪感が顔を出す
これまでは怪獣は街を壊すから、人々を守る為に怪獣を倒す使命を掲げられた。けれど、相手が無害ならそうは行かない
あの怪獣相手では戦う理由が崩れてしまう

でも、まだまだ普通の少年少女である蓬達には積極的に怪獣を殺す理由は中々無い。ガウマもそれに呑まれてしまうから増々おかしな空気になる
結果、ガウマは怪獣を倒せないどころか操れもしないし、見張るはずの怪獣も逃してしまう
有るべき形が散々に崩れてしまう

そんな時に蓬が教えを乞うた相手がナイトだね
探す方法やら長物の扱いとか滅茶苦茶な部分はあるものの、怪獣の捉え方について迷いは無くはっきりした信念を持つ
それは怪獣を倒して良いか迷う蓬にとって良い指針となるわけだね
蓬は今回の怪獣に心が有るのかという点ではなく、このままでは夢芽が危ないという判断に基づいてキャノンを発射出来たのだろうね

それにしてもしっくり来ない回だ……
怪獣を暴れさせる事が目的のシズムは仲間が怪獣と会わないように妨害していたし、怪獣使いしか出来ない筈の怪獣を操る術を蓬は掴み掛けた。ちせの持つ種は何かの形を取り始めている
倒される前に怪獣が自分を見たのを「錯覚だといいんだけど」と俯く蓬。その言葉通り、形のはっきりしない恐れが幾つも広がっているような回だった
それだけにデートの誘いが成功したかのようなラストの蓬と夢芽の遣り取りは逆に良く見えたのだけど



良い

季節は秋に。という事は小熊がカブに乗り続けてそれなりの期間が経ち、カブによって広がった世界に身を置くことに慣れた頃。つまり今の小熊は一端のカブ乗りとしての矜持を持っている
そこでカブへの憧れを口にする椎が登場する事で小熊の新たな一面が見える構図は面白いね

秋になって周囲は文化祭の準備に励んでいるというのに、カブの乗り心地や装備品にばかり目を向けている二人は何ともらしいね(笑)
そんな二人がカブ意外に目を向ける理由があるとすれば、それこそカブが関わる必要がある。だからって「原付きなんかで~」と言っているのを聞いてムキになる小熊は随分変わったと言うか、カブの事になると目の色が変わるようになったと言うか

クラスの一員として手伝ったのではなく、カブ乗りとして手伝った小熊だから椎への助言もカブ乗りの先輩としての含蓄を備えたものになる。あれらの言葉は小熊がカブに乗ることで世界の見え方が変わったから言える事なのだろうね
その一方で人生の先輩である先生の「困らせて欲しいのよ」という言葉にピンと来ていなかったのはちょっと面白かったかな(笑)

小熊からは抜けた部分があるように見えた椎。けれど、彼女は体の冷えた小熊達に最も必要な温かいコーヒーを持ってきた。それに文化祭のバールを立派に仕切っても居る
椎は小さな見た目に夏空のような大きな中身を持っていた
そんな彼女が今後どのようにしてカブを手に入れて、自分の世界を広げていくのか興味を持ってしまうね



良い

慊人と楝という憎しみをぶつけ合う親子関係
この二人は楝の嫉妬によって早い時点から擦れ違っていたけど、その後も関係が修復されなかったのは偏に晶の死によるもの
晶の死が二人に永遠に手に入らないものを焦がれさせ人格を歪めるきっかけとなってしまったのだろうね

今回描かれている事は冒頭の会話シーンを基に考えると色々と思う所があるかな
目に見える透の為に生きていく事を幸せと決めた今日子と、もう目には見えない勝也に会いたくないのか気にした夾の対比
見えない呪いの繋がりを持っている為か、十二支は目に見えないものを重視しているように思える
それは慊人や楝も同じだね

晶の想いを一身に受けている頃の楝は幸せだった。けれど、それが慊人に分散されたことで楝の幸せは揺らいでしまうわけだね。自分が晶を愛する以上に晶から当然のように愛される慊人
おまけに自分は晶の死に際に立ち会えなかったのだから尚更に楝は晶の愛情を慊人に奪われた形になる

でも、それは慊人も同じであったのは皮肉
自分を特別と呼ぶのは楝を愛していたから。なのに楝はそれをちっとも理解していない
そこからの二人は既に見えない存在になってしまった晶の愛情を奪い合うように憎しみ合うのだからとんでもない話
慊人が大事に抱え、楝が死物狂いで求めた箱が空であったのは直喩に過ぎるね

他にも見えないものを重視する十二支の姿には哀れさを感じてしまいそうになる
慊人が女性として育ったらなんて姿を楝に求めてしまった紫呉
見えない絆の喪失に喜べず感情を揺らす燈路
失ってもう無くなってしまった繋がりの為に慊人を守り続けた挙げ句に刺された紅野も……
また、空虚な言い争いをする女中たちは飛び切りに哀れだったね

そして、既に亡くなっている実母の忠告や今日子の恨みに縛られて、有りもしない透の死まで夢見てしまった夾
彼も他の十二支と同じように見えないものに縛られてしまうのか、それとも目の前にいる透の言葉に耳を貸すことは有るのか?
透と夾、二人のこれからが気になるラストだったね



とても良い

感情を伝える事を苦手とする璃奈は愛との出会いや同好会への参加で自分を変えようと思い立ったようで
そのように考えられる彼女はアウトプットが苦手なだけで人との交流そのものを不得手としているわけではないと判るね。だから逆に出来ない自分への失望を抱いてしまったのだろうけど

沢山の人と繋がりたい、本当の私を見て欲しい、出来ないからやらないは無し。彼女はそうして変わろうとしている
そんな璃奈の心懸けは立派なもの。でも一方で今の自分を否定し過ぎているようにも思える
だからクラスメートをライブに誘おうとした時に、ちっとも変われていない自分の表情にショックを受けてしまう

璃奈にとって変わった後の自分とはそのまま沢山の人と繋がれて、本当の自分を見て貰えて、出来ない事なんて無いアイドルなのかもしれない
でも、出来ない事が無くて欠点の無いアイドルなんて実は味気ないのかも
そういった意味ではかすみの言った「駄目な所も武器に変えるのが一人前のアイドル」というのは天啓に似た言葉
感情を顔に出せないなら逆にそれを特徴にすればいい

感情を出すよりも機械いじりが得意ならそれを武器に
それを踏まえた璃奈のライブは二つとないものに。またクラスメートとの会話においても無理に自分の表情で話さないことで上手く喋れたようで
望んだように変われたわけではない、出来るようになったわけではない。それでも璃奈は璃奈自身の特徴を活かしてアイドルへ変われたようだね

それはそれとしてライブシーンの璃奈って、かなり可愛くありませんでした……?
久々にガチときめきしてしまいましたよ……



良い

オフィーリアの自殺原因を探る上で外せない要素の『心』
人々を感動させる彼女の歌には心があるように思えるし、オフィーリアが自殺したならそこには心の動きがある筈
だからオフィーリアの自殺を防ぐにはAIの心に迫る必要があるのだと感じられた前半部。そこから終盤にかけての急転直下が凄まじかった……

そういった意味では今のディーヴァが「心を籠めるとは?」を「初歩的な悩み」と呆れてみせたのは驚きだったかも
それは60年を超える活動の中で見出した答えなのか、それとも今のAIにとっては一般的な答えなのか。ヴィヴィの時には判らなかったその答えをディーヴァがどのようにして手にしたのか気になるね

けれど心の問題が初歩的な悩みであるなら、オフィーリアの自殺において心はそれほど大きな問題にならないと示唆されていたのかもしれない
思えばオフィーリアの言葉には少し不思議なものがあった。歌で皆を幸せにする『使命』を持っているのに、最高の歌を歌う事を『望み』であるかのように言う
『使命』に基づいて行動する筈のAIにしては奇妙な言葉

そう考えれば、オフィーリアの自殺において最も重要な問題となってくるのは『心』でも『使命』でもなく『望み』になってくるのだろうね
オフィーリアの歌声を理想に近づける事を望んだアントニオはサポート対象であるオフィーリアを乗っ取った。最早自殺を防ぐなんて意味は無い。その場しのぎは通用しない
果たしてこの状況を心を笑うマツモトが防げるのかどうか……

そういえば、マツモトの言動も奇妙さが目立ったね。ディーヴァを影から助けた行動も引っかかったけど、今回はオフィーリアを前にして彼女の自殺動機を推察してみせた。ディーバが言及したように根っこの問題を解決しようとしたのだろうか?
マツモトもAIなりに少しずつ心を持ち、そして理解し始めたのかと思ってしまうね



良い

この作品では86達の命が軽く消費されてしまう事はカイエの一件などで充分に判っていた筈なのに、ダイヤやレッカが為す術なく命散らす描写に衝撃を受けてしまう……
こんな環境だからシンエイに課せられた役割の重さを感じられるし、それに寄り添おうとするレーナの覚悟も感じられるね

それでもスピアヘッド自身は自分達の命を出来る限り尊重しようとしているね
「笑えなくなったら負けだもんな!」と花見を楽しむスピアヘッド。また、レッカが死に、もぬけとなったベッドに心を痛めつつも「ダーツしよ」と今を楽しもうとするクレナ
スピアヘッドにとって生きるとは笑みを失わないことなのだろうね

そしてもう一方の死に抗おうとする動きが隊員を忘れないこと
隊員が減って余った食事をアンジュは「一人で持てるから」と抱え上げた
また、シンエイは死んだ者達の名前を拾い上げた
そこに新たに加わろうとしているのがレーナだね。彼女は86には会った事はないけれど、メモの形で86達を忘れないようにしているね

それが時にはシンエイすら忘れていた人を覚えていたのは印象的
ショーレイの首に囚われ過ぎたシンエイには優しかった兄など思い出せない。けれど、レーナはちゃんと覚えていた。シンエイが拾い上げることが出来なかった者をレーナは生きている者に伝えてみせた
そういった記憶の連鎖がいずれ隔絶を超えた愛へと昇華されるのかと興味を覚えるね



とても良い

変化を前に苦しむ蓬達。怪獣を通じて変化するムジナ。そこへ現れるのは怪獣からヒーローへ変化した彼
蓬達にとって重要な分水嶺で彼に出会った事は蓬達に大きな変化を齎すのだろうと予測していただけに、外的要因によって変化するのではなく、内的に幾つもの話し合いを重ねた上で折り合いを付ける形にするとは思わなかったかな

暦にとっては好印象皆無な稲本の夫。あの場所に居合わせ事は誰にも知られていないのだから、見捨てたって責める人は居ないし暦に助ける理由はない
それでも稲本に話した嘘のような「人助け」の仕事を理由に暦は逃げなかった。結局、夫婦仲を取り持つ形になってしまった暦には何の得もない
でも、自分の行動に悔いはないのだろうね

姉の笑みに納得行く理由を見いだせない夢芽
これまでは事故であれば笑みの理由なんて知る必要はなかった。けれど、自殺ならその笑みには理由がある。でも、香乃の事を全く知らない今の夢芽にはその理由は見当つかない。だから夢芽は苦しんだ
それでも蓬が隣に居る事で一応の折り合いは付けられた感じなのかな

蓬と夢芽の関係はやはり進展なんてしていないし、夢芽の過去や香乃の死因に関わる理由も明確に持っているわけではない。シズムと夢芽が何を話していたかも気になっているが聞けないまま
それでも蓬は見つけてみせたわけだね、夢芽に関わる理由を

オニジャは「向こうは二体、こっちは二人。負ける道理はない」と言う。でもその理論で言えば蓬達はナイト含めて5人。変化そのものは出来なくても折り合いをつけてバラバラの力を合わせた蓬達こそ負ける道理はない
だから怪獣にも勝てるし、そ交わした言葉も少ないグリッドナイトと共闘する事も出来たのだろうね

そして……
アンチ君が成長してる!おまけに隣にいるのは二代目さんですか!二人共随分と印象が変わって……
言動や技名からグリッドマンの残滓を感じることが出来て満足ですよ
今回は少々の共闘だけに終わったけど、今後は世界の謎に迫る中で協力体制を取ることも有るのかな?



普通

原付二種を取得したことで更に行動の自由度が上がった小熊
上昇した自由度を修学旅行に参加する為に早速披露してくるとは……
話が進む毎に行動範囲が広がっていく小熊の様子には良い意味で驚かされるね

発熱は旅行を諦めざるを得ないから連絡したのにあっさり熱が下がってしまう理不尽
発熱が自由を束縛する現象であるなら、解熱は束縛からの解放か。それでも普通はそこから修学旅行に参加なんて出来る筈がない
でも、小熊には自由の象徴であるカブが有ると(笑)

だからって単身旅行先に向かってしまうのは破天荒にも程があると思うのだけど、こうした行為を迷いなくするようになった状態こそ小熊がカブを手にした事によって得られた自由なのかも知れないね
自由な小熊は単純に目的に向かうだけでなく、寄り道だって出来てしまう。これは小熊だけが出来る自由な旅行だね

翌日の自由時間も先生の忠告を無視して礼子と共にツーリング。誰かが求めるルールが有ったとしても従順に従おうとするのではなく、ギリギリ許される範囲で自由を謳歌する二人
カブが有るから出来ること。カブと共に居るから夢見る将来。二人の様子は青春模様に溢れていて眩しいね



良い

紫呉によって示される呪いの終わり。あれだけ十二支を縛り苦しめてきた呪いが放っておいても解けるというのは衝撃的
ただ、こうなって来ると別の見方が出来るようになるんだよね。十二支や夾にとって呪いが問題とならないなら、別のものが問題となってくる

夾の呪いがいつ解けるのかと気にして、夾を誰からも奪われたくないと執着を見せる透。それはきっと恋愛と呼べる感情
透に夾を譲った楽羅もそれを理解しているから、夾に自身の感情を告げられずに燻る透に憤る
でも、透は既に別の相手に対する執着で一杯一杯になってるんだよね

父親の死、今日子の憔悴、そして今日子の死……
最初は母親を引き止めて独りきりにならないため。そして母を亡くしてからは心の中に母の面影を繋ぎ止めて自分を保つため
いつまでも母を一番に想い続ける透の姿勢は一種の執着と呼べるもの。こちらは親愛と呼べる感情かな

これからの透と夾にとって十二支の呪いが問題にならないなら、二人にとって問題となるのは自分の心に正直になって相手を受け入れるかどうか
夾の未来が新たな姿を見せ始めた段階で顔を出した二人の心の奥底に眠っていた別種の問題
罅の入った写真立てがあまりに不吉ですよ……



良い

心がぽかぽかになれるアイドル……
これまでの「可愛い」「楽しい」等と比べると若干ふわふわした概念を掲げるエマ
仲間に聞いても統一イメージが出てこないから、エマは実地でその概念を探る事になる。その相手が果林になるわけだね

アイドルになりたくて日本にやってきたくらいにエマはアイドルへの熱意を持っている。というより、アイドルや日本に関する事をエマはどれも楽しそうに体験しているね
見ているだけでこちらまで温かい気持ちになってしまいそうなほど

対してエマの傍に居る果林はとてもクール
同好会を手伝いつつ賑やかなのは苦手と距離を置く。エマからアイドルへの興味を聞かれた際には過剰とも言える拒否反応を見せるほど
これらの言動からは果林は熱意が無いのではなく、意図的に熱意を押し殺しているのではないかと思えてしまう

だから果林と向き合うことこそ、エマにとって自分のアイドル像を探す道に繋がるんだよね
果林の心を温めて、果林が自分のキャラじゃないと遠ざけたアイドルに対する想いを明らかにさせる。でもそれだけじゃ、果林にアイドルの道を選ばせることは出来ないから最後のひと押しにエマのアイドル像を込めた歌唱を見せる必要があったんだろうね

最後の「出来るかしら、私に」という言葉は疑問ではなく一つの確認。だからエマもその言葉が出てきた時点で始まっているのだと返せる。熱を持とうとしなかった果林の心を温める事が出来る

心をぽかぽかにするアイドルというあやふやなエマの概念を大人びた果林と組ませることで上手く表現した内容だったね



良い

ディーヴァの性格が以前と豹変している事にも驚きだけど、前回から大変長い時が経っている事にも驚かされる。もう61歳なんだ…。それお姉様じゃなくてお婆様じゃん……
ディーヴァにもAI達にも数多くの笑顔が見え、誰もが幸せを享受しているように見える。だからこそ、そこに違和感を覚えてしまう

AIを滅ぼすAIであるヴィヴィの人格を無くした今のディーヴァは歌にだけ邁進しお客も増えていると言えば聞こえは良いけれど、正史においては博物館贈りにされる運命を持ち序盤に置いては「音階をただなぞっているだけ」と揶揄された彼女の歌が大衆に受けているという事実
何かが致命的にズレているような……

そして付き纏う疑問は前半部の殆どに見られるね。特にナビと話すシーンなどこれまでであればマツモトが介入しそうなパターンのシーンなのにそれも無かった
ディーヴァとしては正しい有り様。そしてAIの活躍が広がる世界。全てが有るべき姿を示す世界に突如現れた有るべき姿ではない垣谷の姿にはかなり驚かされたよ

そして第一話と逆の構図を魅せる後半部。あの時はマツモトがディーヴァを勧誘するために言葉を尽くしていた。今度は逆にディーヴァが言葉を尽くしてマツモトの考えを変えようとしている
再起動によって消えた筈のマツモトとヴィヴィの繋がり、それが再び生まれた意味とは?ヴィヴィを二度に渡って助けたマツモトの真意とは?そして何故オフィーリアが自殺する羽目になるのか?何もかもが気になるね



良い

これまでのレーナは頭の中お花畑と呼ばれる程に世間知らずの正義マンに思われていたのだけど、一番辛い時に86に助けられた経験があったのね。そしてその時に86が戦う想いを聞いたと
そんな原体験があるなら86を人として扱わないなんてそりゃ無理な話なんだろうなぁ…

前回にてレーナがスピアヘッドに対して歩み寄ったことを反映してか随分穏やかな前半部だったね
革命祭に行くのを躊躇うレーナ、哨戒中と嘘をついてレーナの話に付き合っていたシンエイ。更にシンエイの兄について話を聞く様子も有ったりと、徐々に双方の心理的な壁は取り払われてきた印象

その印象をぶった切る亡霊たちの声とシンエイが語る戦争の行く末は恐ろしいものだったね
絶望的な事実を前にしてもレーナは一緒に戦おうと言おうとした。けれど結局言えなかったのは心理的が壁が減ったとしても二人の間にはまだ消しようのない空間的な壁が有る。それこそ自分の話を聞くシンエイの表情を窺い知ることが出来ないように

これまでレーナ陣営と86陣営を分ける場面転換の際にはOPEDやCMを用いる場合が多かったように思うのだけど、今回のED前後はシンエイが映ったまま
ED画像は色が反転した月、ED後にはシンエイが首の痕を晒しながら死んだ兄に言及している事から、ED後の場面は死者の世界なのかなと深読みしてしまうね



普通


良い

それぞれの違い、異なる大好き。それを肯定したから同好会は復活できた
けれど一致点を決めないままに再スタートしたからやりたい事が違うまま。最初の特訓ですらグループ分けが必要と同好会の問題が見えてしまった
今回は知らずしてその問題と向き合うことになってしまった愛のメイン回だね

でも、愛はそんな事知らないから、全部の特訓に参加してしまうくらい純粋に今の同好会を楽しんでいるんだよね。
そんな愛の姿を見れば判るように、この同好会なら楽しい何かを作れるというのは確かなのだろうけど、では実際にどういうライブにするのかという具体案は挙げられない
だからソロアイドルなんて方向性も持ち出される

同好会が直面した迷いは愛にも降りかかるもの。アイドルになるなら愛も自分なりの正解を考えなければいけない
でも、エマからすれば既に愛は自然に正解が出来てるんだよね。『楽しい』が好きで『皆を笑顔にしたい』
それこそが愛が目指すアイドル道

それはそれとして、ランニング前にランニングした挙げ句、公園でゲリラライブしてみせた愛の運動能力ってとんでもないのでは……?
そんな体力お化けな一面を見せつつも最終的には親父ギャグを連発してしまう意外性
早くも一人のアイドルとして輝き始めたように思えるね



とても良い

家庭問題、姉の死の真相、過去関わった女性。ストレスフルになっていく夢芽達。自分に苛立ち、人に苛立ち、境遇に苛立ち……
そうして戦いすら上手く行かなくなった状態から『彼』の登場で一気に空気が変わるカタルシスがあまりに素晴らしい!

今回、夢芽達が向き合うことになったストレスは変わらないものへの苛立ちかな
稲本とその夫は無職から変われないままの暦をまるで無価値だとでも言うかのようにプレッシャーを与えてくる。特に夫の方なんて暦の名前すらしっかり覚えてくれない

夢芽が見たドッキリ動画。一見すると虐めにしか見えない、がそれで事故が自殺になるかは判然としない
それに夢芽の中にある姉のイメージと動画の曖昧な笑みはきっと一致しないし、姉の事を教えてくれた先輩の印象もきっと引っかかるものがあるのだろうね
結果、夢芽は姉の死を事故死から変えることは出来ない

蓬の家庭環境も変わらないまま。変わらず母と交際する男性との会食に蓬は巻き込まれ続ける
そして夢芽の調査に付き合う内に関係性を変えられたと思っていたのに、返ってきた言葉は「蓬君にはそんなに関係ない事だよ」
夢芽に近付けた筈がその距離は変わらないまま

怪獣は世の中を変える。怪獣に関わるムジナも変わっていく
そんな変わっていく相手に変われない苦しみの最中に居る夢芽達は苦戦する
だからこそ、そんな大ピンチのタイミングに怪獣からヒーローに変わった『彼』が登場した事は大きな意味を持っているように思えてしまう
ようやく「グリッドマン」と明確な繋がりが見えてくるのかな?



とても良い

小熊の場合はカブが新しい世界へ連れて行ってくれるという印象を受けたけど、礼子の場合は可能性を切り開く為の武器がカブという感じなのかな
カブ仲間はカブ仲間でもカブへの見方が随分違ったのは意外だったかも

自由を阻む高い壁の具現化的存在として富士山を相手に考えた礼子
普通は許されないバイクでの登山。それは自由が制限された空間であると同時に限界を試される空間でも有るのだろうね
玲子の場合、富士山に登るのは「そこに山があるから」ではなく「普通は登れないから」なのかもしれないね

ただし、限界を攻めれば自分を追い込むような行為になってしまう。苛立ちが続けば全てに対して悪感情を抱いてしまう
残酷なのは礼子が挑む富士山は世界一高い山ではないということ。富士山以上に高い山を登った人間は存在しているのに礼子は富士山すら満足に登れない

でも、一方で富士山は敵ではないんだよね。それに気付けたから礼子は逆境を楽しめるようになった
カブで富士山を登る千載一遇の好機。例え登り切ることは出来なくても「カブなら何処までも行ける」事は証明できる
だから挑戦は成功せずに終わっても礼子は悪くない気分を味わえたのだろうね

話を聞いた直後は礼子の挑戦を「馬鹿みたい」と言った小熊。だというのに眠る時には「私のカブなら頂上まで登れる」「出来ない事はないと思う」なんて言ってしまう
礼子の挑戦が小熊にも影響して「カブなら何処までも行ける」という心を伝播させたのかもしれないと思うと礼子の挑戦はある意味成功と言えるのかな



とても良い

草摩楝との対立、紫呉との確執、潑春の離反やら何やらで不安定の度合いが目に見えて増していく慊人
不安定だからこそ安定した、変わらないものを求めてしまうが人や感情は慊人を置き去りにして変化し続ける今回のテーマには哀しさを感じてしまう

美音との仲を深める綾女、真知に呪いの事を伝えたいと考え始める由希、夾に挨拶できた杞紗…
以前なら考えられなかったような変化が見られる十二支。それは時の流れに依る部分もあるし、単純に彼・彼女らが変化しようと努力し続けてきた結果でも有る

特に紅葉の変化は顕著だね。というか顕著過ぎるね!いきなり大きくなってない……?
それは兎も角、王子様のように変化した紅葉はただの子供では居られない。透と手を繋げば恋人のように見えるが、一方で透から恋愛対象に見られる事はないと判っている
聡い子供はより聡い青年になった

そんな紅葉の呪いが唐突に解けたのは少年期の終わりを暗示しているかのよう
慊人の慟哭は理不尽を嘆くものであると同時に、紅葉を縛ろうとする偽の母性による最後の抵抗
だから紅葉が慊人に対して自分の未来を語るのと同時に実母との会話が差し込まれたのは、母性に因縁有る紅葉に巣立ちの時が来たという意味だったのかもしれないね

紅葉は母に見送られる形で自分の人生を歩き始めた。何が待っているか判らない、けれど何も無いなんて悲観する必要のない未来に向かって
そんな変化を選んだ紅葉と真逆の者達。十二支との絆に縋り閉じ籠もる慊人、透の想いの意味を判りたくないと俯く夾
彼らに変化の日が訪れるのはいつになるのだろうね



とても良い

ディーヴァは自身の使命を拡張する事でAIが人類を滅ぼす未来を阻止している。使命は絶対的なものではなくて、その使命の意味を広く取ることでAIはある程度行動の自由を得られる
そういったヴィヴィの前例があるからこそ、使命を強制的に書き換えられたグレイスの悲劇性が際立ってくるね

前回見た際はグレイスが冴木と結婚したのは使命に則ったからだと思っていただけに、「誰でも良いというわけではありませんよ」との言葉にはハッとさせられた
グレイスは自分の使命に準じながらも、使命だけに縛られず心で冴木を選んだわけだね。そこにはグレイスの自由意志が有った
けれど、グレイスはAIだから冴木だけに奉仕する事を人類は許してはくれない

ここで冴木がグレイスの運命を受け入れられないのは様々な意味で興味深い
想い人が不遇の立場にいる事を人間的な認識で哀れに思い抗っているように見えるし、グレイスは以前の使命を忘れられずに居るなどとAIにとって使命が絶対的であるという機械的な認識も見える
また、グレイスの似姿をヴィヴィへの攻撃に用いた様子からも彼の中でグレイスを人間と変わりない相手として扱うか、機械として扱うか非常に曖昧であった事も見えてくるね

人間と変わりない姿に見えるAIも使命に縛られていない時は人間との差なんて殆どない。母代わりの温もりだって与えられるし、歌だって歌える
でもそれは時として中身のないモノに意味を見出してしまう事にも繋がる。それこそ音階データを歌と錯覚してしまうくらいに
でも、あの歌を否定してしまったらそれこそディーヴァの使命も否定してしまう

だから歌の使命を持つディーヴァではなく、AIを滅ぼす使命を持つヴィヴィと名乗り換えた。それによってヴィヴィはメタルフロートを止められたけど、同時に人を幸せにする使命も失ってしまう
AIを壊し人間を死なせたヴィヴィ。2つの血に染まった彼女の手は相反し崩壊した使命の象徴のように見えてしまうね



普通


とても良い

こういう主人公本当に好きなんだよね
助けようと思っていた相手に理想を砕かれ、親友や親代わりからは現実を突きつけられる。何もかもが「もう辞めろ」と促してくる
それでも顔を上げて理想を目指し続ける主人公って本当に好き

セオトの叫びによって自分の愚かさを痛感したレーナ。彼女がこの回で求められるのは理想を諦めて現実に準じろという点。それくらいには前回までの彼女はスピアヘッドの面々を人間として見ていなかったし、それへの自覚がなかった
一方で暴言を吐いたセオトにも罪悪感があって、レーナとの繋がりを修復する事を求められるとは驚きだったかな

これまでは空間的隔絶よりも白系種と有色種という精神的隔絶によってレーナとスピアヘッドは交流不調になっているように思えたのだけど、セオトが慕っていたらしい狐の隊長のように白系種の中にも86と一緒に戦った者が居たようで
白系種と有色種が完全に交わらない位置にいる訳ではないなら、空間的隔絶を超えれば精神的隔絶も超えられるのかも知れないと思えた

レーナがアンリエッタやシンエイから突きつけられているのもそれに関する点だね
空間的に離れているのだから何も出来ない。それに心を痛めていたら精神を病んでしまう。なら空間的にも精神的にも距離を置くしか無い
それは何もおかしな事ではない。それでも自分の過ちと向き合い、「卑怯なままで居たくない」と抗ってみせたレーナは素晴らしいね

セオトとの会話では隔絶が劇的に改善されたわけではない。スピアヘッドからは対等とも仲間とも思われない。それでも今の自分はそういった立ち位置に有るのだと自覚してレーナはスピアヘッドと向き合うと決めて名前を知った
改めて彼らを人間扱いしようとし、挨拶をやり直した。それはきっと新たな始まり

名前を知るとは相手を人間として扱う意味であり、例え死んだとしてもその名前を覚えている限りその人は死なないのかも知れない。シンエイがしているのはそういう行為
だから彼が兄の名前をレーナから聞いて口角を上げてしまったのは、顔すら思い出せない兄を死なせていない人が居たのだと知った喜びだったのかもしれないね



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