山田監督らしい作風ですごく良かった。映画けいおん!にある片鱗が大きく育っている感じ。
大衆受けからは遠くなるが。リズと青い鳥みたいにある種の人間に深く刺さるみたいな作風が好ましい。
こういう映画が大スクリーンで見られるのはプロデュースチーム含めた映画アニメの成熟を感じる。
そこあにの該当回を聞いていて、言われてみれば主人公は主人公っぽくないし、恋愛もほぼ無いし、
分かりやすい葛藤も解消も無いしと「単館系」な映画だったのか…。「アヌシー」に出してる辺りで気がつかないとダメなのか…。
今は落ち着いているものの、かつてはデスゲームなどを舞台に、人間の醜さを引き出して「利己が人間の本質!これこそがリアル!」と謳う作品がめちゃくちゃあった。本作は、そうした「利己こそが人間の本質」と謳う作品の真反対にある作品と言える。
本作には「大事件」はなく、バンド系作品にありがちな「音楽性の違いでケンカ!」「音楽に対するスタンスの違いでケンカ!」「なんもわかってくれない大人とケンカ!」的な要素もまったくない。世間にとっては小さいけど本人にとっては深刻な悩みを抱えた少年少女たち3人が、周囲と、音楽に助けられながそれを乗り越えていく、とても優しい物語なのである。
それでいて本作は「起伏がなくて退屈」なんてことはほとんどなく(ちょっと退屈に思える箇所はある)、不思議と見入ってしまう魅力がある。これはサイエンスSARUの素晴らしいアニメーションも一因ではあるのだが、キャラクター一人一人の魅力をしっかり描いているからだと思う。
その代表が主人公の一人である日暮トツ子。このトツ子がすんごいかわいい。天然でフワッとした言動は可愛く、しかもそこには「いかにもオタク狙いのあざとさ」が全く透けて見えてこない。
そんな彼女が「自分の色を見出だせない」という悩みを抱えながら、きみ・ルイと友情を深め、音楽に打ち込んでいく過程を見ていて、いつの間にか僕は思わず心のなかで「頑張れ!」と彼女を、3人を応援していた。
印象に残っているのが、奉仕活動を終えてルイの元に久々に戻れたトツ子ときみが手を繋いで喜ぶシーン。僕はここで心のウイニングチケットが出てしまい、泣き所でもなんでもないのに「よ゛か゛っ゛た゛ね゛え゛え゛え゛!!!」とちょっと泣いてしまった。
現在進行系でしんどい思いをしていて傷んだ心に、じんわりとしみた大傑作。
先生の昔の話とおばあちゃんの話がもしかしたらつながってたりしない?とか思ってエモさが爆発してました
劇中の曲が相対性理論っぽいな~と思っていたら、相対性理論のギターの人が参加していた
山田尚子ワールドが全開で素晴らしかった。
とてもよかった。
なんというか……自分にとって大切だと思えるものを大事にしようと思った。
すごく、よかった。
大傑作
言葉にならないというか、言葉で語るようなものではなかった。
自由で、きみの色と言うのにふさわしいものだった。
何度でも見返したい。
しみじみと良さを感じられる作品
どの大人もちゃんと子供を導く存在として描写されているのが良かった。派手さは無いけれど全編通して心情描写が違和感なくスっと入ってくる感じが心地よかった。
映画館で観る意味、というところで言えばやはりライブシーン。昨今バンドアニメは流行っているけれど、やはり映画館の音響で聴くと違うね。作画もカット割りも良かった。
シスターが良い人 みんな良いヤツ
水金地火木土天アーメン
トツ子のパーソナルなペースにつられ肩肘張らずに見れるいい作品。
きみちゃんの爽やかで涼やかな青さとトツ子の淡い色合いを感じさせる二つの可愛さでそれ町のかわいいにも二種類を思い出した。
旧教会や学校、書店での足音だったり端末から聴こえてくる音に温かみがあったし、3人のシーンはいつまでも続きそうな時間の流れを感じさせない安心感があった。
水金地火木土天アーメンってやくしまるえつこが歌ってそう。口ずさみやすくて余韻に浸りやすい。
映画を観終わってからぽかぽかなトツ子の陽気に包まれたようでずっと心が穏やかで幸せな気分。
恋要素もあったが、それより青春という印象の方が強く、感動というよりは青春の美しさをサイエンスSARUの映像美によって表現していると思った
「変えられないものを受け入れるだけの心の平穏と、変えられるものを変える勇気(、変えられないものと変えられるものを区別できる知恵)」というのがテーマになっているのかなと思った
作永きみにとって高校を中退した過去は変えられないし、るいにとって家業の医者を継がないといけない運命は変えられない(だから受け入れるしかない)、だけど中退した事実を隠し続けるかどうかは変えられるし、音楽が好きで友達とバンドをやりたいという本心を親に伝えるかどうかも変えられるということかと理解した
きみが高校を中退した理由は自分が本当はそんなに凄くないのに家族が良くしてくれたり周囲のクラスメイトなどに期待されるのが申し訳ないからだと理解したけど本人も上手く言語化できていないような曖昧性があったり、バンドを結成したのもかなり成り行きの要素が強かったように思えるけど学生の間にやろうと思うことなんてそんな大層なきっかけはいらないのかな…とも納得した
とつ子は自分の色が見えないのも「変えられない」ことなのかと思ったけど最後に自分の色が一瞬見えるんだけど、あれは何で見えるようになったんだろう?完全には理解できてないかも
登場人物みんないい人たちで心が温かくなった、良いアニメだった
個性溢れる三人がバンドを結成する作品。
色と音を扱う作品名だけあって作画と曲がめっちゃいい。
だが、この作品の根幹はそんなことじゃない。言葉にしにくい。
作品の雰囲気は「天使にラブ・ソングを」っぽい。
水金地火木土天アーメンである。
メモ
Date:2024/9/6
たまには穏やかな映画も観るもんだね〜
温度感が良かったですね。悪い言い方に聞こえるかもだけど、見ている間に寝てしまいそうな雰囲気。このくらいのがね、俺は好き
物語のつくりかたが物凄〜〜く丁寧だった。さーっと見ても分かりやすいし、深掘りすると細かく点と点が繋がる要素があって、破綻なく作られているのは凄い。
メインで出てくる声優さんはどれも聞き馴染みのない感じだったが、それが逆に作中のその人その人の自然さと言うかありのままな感じが出ていてむしろいいんじゃないかと思った。きみちゃんの歌声もちゃんと上手いんだけど上手すぎなく、「あ、""居る""な」と思えて、このキャスティングは良い選択だったと思う。
しろねこ堂の音楽、どことなくYMOあたりの電子音楽をちょっと彷彿とさせたけど、多分気のせい。反省文のやつが一番好きだ。あのアカウント、SoundCloudだよね?
ミスチルの主題歌たまんね〜〜〜〜素晴らしいね(感涙)
総じて「自然」さを強く感じられる作品だったので、それが好きな人には刺さるだろうな。いずれ地上波でも放送されそうと思えるくらい、心地よく見られた。
物語は非常に内的にもかかわらず何かを語るより見せるのみという特異な作品。自然主義?
色々と読み解ける要素があるのは分かるが一回で解釈し切るのは無理だ。そしてそういう解釈、記号的な(演出された、ケレン味のある)芝居・台詞と共鳴しない解釈はどうも個人的に「視聴者が勝手に言っているだけ」感があり興味を持ちづらい。
公開初日にIMAX版を鑑賞。
思うことはあったけど,総じていい作品だった。
山田尚子監督が得意とする繊細な心情描写はお見事。作画も良かった。
でも,わざわざIMAXで観なくてもいいかな。
日暮トツ子,作永きみ,影平ルイの三者それぞれに特徴があって,その人物の描き方がとても良かった。
ルイのその後は描いてくれるが,きみのその後を描いてくれなかったのがちょっと物足りなく感じた。
きみと祖母の関係,きみと学校,きみと日吉子先生の関わりなど,なにか後日譚を描いて欲しかった。
それでも吉田玲子による脚本がよかった。氏の書く本はハズレが少ない。
作中で描かれたこと以外の背景についての説明をすっぱりと切り落としてあるように感じたから物語の起こりの部分はとっかかりがないように感じられて、これについてはもう何度か観返したら感想が変わるかも。劇中で描かれたこととそこから生まれた音楽のライブのシーンがすごく良かったので、作中ではっきり描かれなかったことを考えたりするより作中のその瞬間のことを素直に受け取るのがこの作品の見方として自分には合っていそう。
ライブのシーン、ルイが作曲した設定であろう曲のタイトルがルイと直接の関係はない「反省文」なのは曲作りに苦労していたルイにふたりが与えた影響の暗示として美しいし、あとの2曲では5本の指を使って鍵盤を弾いていたトツ子がルイの曲では人さし指だけで弾いているの、山田監督なのか牛尾氏なのかのルイがそういうニューウェーブを愛好するような音楽オタクであるということの解像度が高過ぎてちょっとにやにやしてしまった。ライブシーンの音楽が映画館の音響ですごく良い感じに鳴るようになっていたのは牛尾氏の職人芸かな。
ミスチル特に好きじゃなくて、エンディング主題歌も事前に単品で聴いたときは良さが理解できずちょっと不安を覚えたのだけど、本編を観た後ではこの作品のエンディングに綺麗に収まっているように感じられたので良かった。映像は綺麗だし、メインのキャラクター達の声を声優が本職じゃない人たちが演じてるの、素朴だったり内気だったりするキャラクターと良く合っているように感じられたのも良かったし、また観返したいな。