「バリー氏に抱かれたアンの姿を見たとき、マリラの胸をその奥底までグサリと突き刺した恐怖の中で、アンが自分にとって何を意味しているかをマリラは悟った。アンが好きだということ、アンが自分にとってこの世にかけがえのない存在である事を知ったのだった。」
シャルロッテがプロポーズに返事をするとき、震える唇を一度キュッと閉め、意を決したように言葉を発するところ、気持ちが凄く表れてて好き。
よりもいの、ネガティヴな感情をポジティヴな方向へ昇華していく様は、泣けるし心が温かくなるのはもちろんのこと、毎回そこになんともいえない爽快感があって、それがたまらない!
絶望的な気持ちで泣きじゃくりながらマリラの胸に飛び込んでゆくアンを見て、ウルっときた。
改めて、赤毛のアンの水彩画のような淡く素朴で優しい背景美術が凄く良いなあと思う。作品の雰囲気にもマッチしてるしとても美しい。物語の季節が色とりどりの美しい秋になって殊更そう思う。
「別れのある人生は素晴らしい」という(自分が感じた)テーマは素敵だと思ったし、背景作画、そして特に音楽は素晴らしいものだった。
しかし、ストーリーや演出では不満を感じる事が多かった。穿った見方かもしれないが、ストーリーには感動させよう盛り上げようという、かなり作為的な処が目につき、例えば戦争はストーリー上あまり必然性が感じられなくクライマックスを盛り上げるためだけに起こされたように思えた。また、メインとなる主人公と息子以外のキャラクターの物語も中途半端な添え物といった感じで納得感がないまま終わり、何か作品全体がとっ散らかってしまった印象が拭えない。むしろそれらはバッサリ切り捨てて、二人の物語に注力した方が良かったのではないかと思う。
最後に、ストーリー進行、演出ではP.A.Worksに特徴的な、セリフ主体でややせっかちに物語を進めていく感じだったけれど、この作品に合っていたのか疑問が残る。登場人物の心情を表現していく上でもう少し表情や視線、声質、それから「間」を使って表現して欲しかった気がする。セリフ主体の表現では、物語に、人物の心に、引き込まれのめり込んでいくのが難しい。そういう意味で、人物作画は表情に乏しく、そして声優さんの演技はやや実力不足に感じられてしまった。
批判的な感想が多くなってしまったけど、テーマが素敵だと思うだけに、口惜しい感じだ。
「何かを楽しみにして待つところにその喜びの半分があるんだわ。楽しみが本当にならなくても、その楽しみを待っている間の楽しみは間違いなく自分の物だもの。」