命を失っても可怪しくないH城址での恐怖を詠子との会話を通して飲み下しているのに、「とっても楽しめたんだね」と別の意味で消化させる詠子は恐ろしい…
だからこそ否定できない螢多朗が「恐怖を愛している」という点も見えてくるのだけど
あれだけの目に遭いながら辞められない螢多朗は立派な恐怖ジャンキーだよ…
旧Fトンネルへ行く前の卒業生回収、前回の大僧正がヤバかったように本作は武器回収も命掛け
でも、そうなるのは卒業生が地獄に通じる存在だからかも
今回の卒業生は背景からして生地獄を味わった者。それが成仏できず現世に留まり続けるならその周囲はどう取り繕っても地獄。だから回収も命掛けになる
それでも夜宵が居るならまだ危険性は低く思えるね
いわば制御された恐怖。だから螢多朗は今回の行動を後悔しないし、詠子も恐怖に惹かれていく
けどこれから向かうは危険な卒業生が必要な悪霊が棲まう場所なわけで
その意味では次回こそ本物の恐怖が振り撒かれるのだろうな…
原作既読。流石に1話単位で感想を上げるのは手間なので一纏めに
魔王を倒した後から始まる物語。人間にとっては時代の転換点と言える程であり、ヒンメル達にとって永遠とも言える10年。けど長命のフリーレンには「たった10年」で些細な話
ヒンメルの死という停止を前にようやく「たった10年」の意味を知るべきだったと悟った彼女の物語は類を見ないもの
人間とエルフで異なりすぎる時間感覚が本作をとても良い作品にしている
フリーレンにとっては短い時間でも人間はあらゆる変化を内包できる。フリーレンは変わらないままなのにかつて接した人は老いてしまう
フリーレンにはたった10年や80年でも世界はそれだけの時間が過ぎている。つまり、フリーレンが知らず過ごした時間にはたくさんの「知」が詰まってる
ハイターが拾ったフェルンは時間経過の象徴だね
勇者パーティの旅には居らず、出会った当初は世話される幼子。でも共に過ごす内に彼女は成長しフリーレンと旅するように。それどころかずぼらなフリーレンの母親代わりみたいになってしまった
フェルンの身に起きる「時間」はフリーレンに人間の何たるかの一端を教えるもの
また、異なる時間を持つフェルンとの旅はフリーレンの「時間」にも少し影響する
フリーレン一人なら半永久的に続けそうな蒼月草探し。でもフェルンの時間はそれを許さない。そんな関わりがフリーレンの行動を変え、想いを変えるわけだ
それが明確に現れたのがフェルンの誕生日を祝うシーンかな
1年に1回なんて「頻繁に」訪れる出来事を彼女は祝った。それはフェルンを知る前のフリーレンなら考えられない行為だろうね
旅の折々で見るヒンメルの足跡はフリーレンに彼という人間を教えてくれる、いわば対話の一つ
でも、その遣り方では人間を知った上でヒンメルと語らう事は叶わない。ハイターやアイゼンが気遣ったのはそういう点
魔王討伐と同じ道を辿る新たな旅はフリーレンの「たった10年」を「掛け替え無い10年」に変えるのだと察せられる素晴らしい初回となったね
最終回はAIやヒューマノイドがどうのという話ではなく、単純に人と人の繋がりを問う話になったような
須藤が探し求めるのは母のコピー。それは前回のリサとトゥー・フィーで示されたように母とは別人、須藤とは他人
それでも須藤が探すと言うならそれは最早感情論ではないのだろうね
出逢ったばかりの頃の須藤とリサは他人だった。けど、似た境遇という要素が他人で片付けられない関係性を築かせた
血や家族以外にも人は誰かと他人じゃなくなる瞬間が有る。逆に言えば、あっさり他人になれたりもする
須藤がリサや瀬戸にしたのは他人になる為の儀式
須藤はそれで良かったとしても、他人にされた側は堪らない。だから須藤はきちんとリサと話し合う必要があって。
最初は他人で、他人じゃない時間を挟んで改めて他人になってしまった須藤とリサ。それでも繋がりを求めるならば、一緒に居たという時間の存在が二人に他人ではないという人格を与える事になったと言えるのだろうか
これまではAIやヒューマノイドが存在する社会を上手く描いていたように思えただけに、色々と中途半端に終わってしまった最終回は少し残念だったり
かといって須藤が旅立ってしまった以上はこれまでのような話も展開出来ないだろうしなぁ…
結局MICHIは須藤に何を求めていたのだろうか?
血筋に基づく正当性にこだわるセト、想いに立脚する正当性を掲げるレオ
だからレオは玉座に座れなくても王者として国を先導出来るのに対し、セトは自らが王の血を引いていない程度で絶望する
でもセトが手に入らなかったのは全くの別物。彼は血筋にこだわる余り己の喪失にずっと気付かずに居たのだろうな…
自分の出自を理解したのにそれを認めず暴走した彼は遂に命すら失う
彼はレオに負けたのではなく自分自身に負けた。王たる己にしか存在理由を見出さなかったから王でない彼は己すら失った
対するサリフィの叫びは様々な種族を混じり生きる魔族の国で人間ながらに暮らした事で懐いた理想を踏まえたものなんだろうな。そしてそれを体現するのがレオとなるわけだ
正当性に縛られていたのはアヌビスも
信奉する王に仕える気持ちがレオを裏切らずに済ませたけど、その為にレオの本当に姿に気付けなかったし、彼が友を求めていた点にも目を向けられなかった
でもサリフィによって血筋より想いを掲げられるようになったレオはアヌビスに友としての貢献を伝えられる。それが失われたと思われていた友という繋がりを復活させたのだろうね
レオの出自は人と魔族の血を引くという特別性より、愛によって生まれた愛された息子であるという特別性を伝えている
日記に拠ってレオは本当の己を手にしたけど、それは人に拠って与えられた本物。ここで彼がサリフィと自分が望む本物の自分を偽りのない己とし、民衆の前に出る展開は良かったなぁ
レオが目指す在るが儘に生きられる世の中を端的に表しているように思えたよ
サリフィによって己を手にした一方でサリフィもレオによって己を手にしていたという流れは良いね
望む己を大変な苦労の果てに手にした二人の子供だからリチャードはレオとは全く異なる子供時代を過ごせるのだろうね
彼の在り様はサリフィとレオに拠って代わり始めた新たな国を体現する存在であり、同時に二人が形作った幸福を一身に浴びる幸福な子供であると判るね
いわゆる『美女と野獣』タイプの系譜なんだけど、終わってみれば現代の問題に通じそうな要素をファンタジー作品として綺麗に纏め上げた作品だったように思えるね
原作漫画の時点で充分に楽しめていた作品だけど、アニメとしても不足なく楽しめる、とても良い作品でしたよ
ティアの話とリリィの話の温度差が有り過ぎて…
でも辛いティアの過去を受け止めているのがリリィがリーダーを務める『灯』なのだと思えば、別の意味で組み合わせが良かったと言えるのかな(笑)
リリィは疑惑を誇る、ティアは疑惑に悩む。そのズレが『灯』をより良い空間にしている
勘違いから『灯』をラブコメの嵐に巻き込んだリリィはズレの先導者。リーダー・リリィが率先して間違うからエルナ達も各々で勘違いしていく
リリィが『灯』の中心として雰囲気を作っているが、他の面々もスパイチームらしからぬ雰囲気醸成の一助となっている
一方でそれに流されない者も居るというズレも同時に存在しているわけだ
打って変わってティアはスパイの闇、自身の闇と向き合う。だからこそ紅炉が遺した自らへの光にも気付けたのかな
それでも心が負ったダメージは大きいから彼女を癒やす者が必要となって…
ティアと完全にズレた雰囲気でラブコメしてる『灯』が傷付いたティアを受け止める居場所となるわけだね
『灯』は『焰』という家族を失ったクラウスにとっても居場所となったようで
『焰』では異なる立場だった彼は『灯』での立場を認められなかった。でも卒業したリリィ達により認められたなら彼は教師でありボスであり…
変則的なスパイの教室が誰にとっても良い空間となっていると判る最終回だったよ
恋愛が判らないあまり家族すら判らなくなるローレンには苦笑してしまうけど、そもそも彼は親しい者との関係にどのような名を付けるかという点を悩み続けた人間だったのかもしれないと思えたよ
だからこそ、恋愛を求めながらも家族だと受け容れてくれたセシリアの想いに応える事が出来たのかな?
身近な愛する人を形容する言葉としては恋人とか彼氏・彼女とか色々あるけれど、ローレンはそれ以前にセシリアとの関係をどう名付けるかを決められていなかった。だから常に聖女呼びだし、聖女以外の彼女が何か判らない
その意味では一緒に暮らすという点から「家族」と形容できたのは彼にとって大きな前進なのかも
…随分回りくどいけど(笑)
家族を言い訳にハグしてしまったのはこれまでを考えれば大き過ぎる変化。でも、セシリアが最終的に目指すのは家族であったとしても、その前段階があるわけで
セシリアは女の子からローレンを譲られた。なら関係を変える時間はまだ有る筈で。そういった意味ではセシリアとローレンの関係は始まったばかりとも言える最終回となったのかな
夜宵生存は予告でネタバレされたのは仕方ないとして、本格攻勢を仕掛けるH城址の霊に対して、夜宵も卒業生を繰り出す流れは大バトル感が有って良いね
また、その中で無力に過ぎない螢多朗にも見せ場があったのは好印象
夜宵を模した悪霊を前にしながら、又は逃げ去るH城址の霊を追う際も。螢多朗は状況を冷静に見て起こすべき行動を実行しているね
そもそも夜宵がああして卒業生を顕現できたのも螢多朗が夜宵の名を呼び続けたから
夜宵の方が強いのは事実だけど、螢多朗は立派に夜宵の相棒を出来ているように思えるよ
H城址の霊は恐ろしかったけど、それ以上に卒業生である大僧正はヤバい存在だったね
毒を以て毒を制すと言わんばかりの脅威。関わる事すら間違いと感じる卒業生だけど、最終的にはこれらを束ねて神様に挑もうというのだから本作の目指す境地がどれだけ人知を超えたものであるかを察せられる回となったね
途切れていた関係が修復された二人が目指すは次の関係
洞窟で不能へ舞い戻ったのはルディにとってキツい流れだが、それによって問題をシルフィも共有できる構図に
サラと違い、シルフィは不能に直面してもルディを非難しなかった。この時点でシルフィがルディにとって最愛の人に成り得ると見えてくるね
行為は失敗しても二人はそれで終わらない。昔からの関係があるから、肉体的な繋がりが無くても自分達の旅路を話す事で二人の心は充分に結ばれる
だからシルフィもルディと同じように治療方法を模索し始める。そうすれば彼女に協力的なルークやアリエルも同様となるわけか
…まあ、ルークがああまで理解を示すとは予想外だったけど
ルディだけが探すのでは見つけられなかった治療法も三人寄れば文殊の知恵、あっという間だったね
……その過程でルークが色々爆弾発言していた気もするが(笑)
方法が見つかり、シルフィに覚悟があるならば、次の関係に進むのは難しい話じゃない
それでも試練のようなものだからシルフィだけでは重荷
緊張の空間を和らげるのもやはり昔語りになるんだね
それでも「薬」を飲んでしまえば進む以外の道はなくなり、次はルディが試される番
不在の空間を見て、思い出すはエリスとの別離か…。だからこそシルフィが当たり前の顔して戻ってきたのはルディにとって感動となり、不能から抜け出す瞬間と成り得たんだろうね
ルディが覚えた最大級の感謝はシルフィを始めとしてアリエル達にも向けられるもの。アリエルの助力になるとすれば、シルフィとの関係も更に進めるきっかけとなるのか
仲間も目的も失いかけ、宛の無い旅を始めたルディがシルフィとの再会を経てこれだけの幸福を手にするなんて第二期を見始めた時は思いもしなかったなぁ
これは早くも続く物語を楽しみたい気分ですよ
欠片達の物語も遂に最終回、けど立ち上がりに特別感は無くいつも通り
お寝坊な彼女の髪を弄っていつもと違う髪型に。それが結果的に友達に受けて好印象ってなんだか青春模様に満ちている
そして、その構図がラストに繋がるのだから良いね
些細な力比べから生徒会に全員集合して更にわちゃわちゃするとか日常風景の極みかのよう
特に海に行く話とか、本編におけるドライブの約束を踏まえたものになっている事も合わせ、卒業後も彼らの絡みは続いていくのだろうと期待できるものになっていると思えたよ
本編最終回にも有った誰とも繋がらない世界の堀版
けど些細なきっかけから繋がりが薄かった面々が絡み始める様子は誰とも繋がりが生まれないなんて有り得ないのだと思えるし、本編では透の拾ったピアスを受け取れなかった宮村が、こちらでは堀の携帯を拾っている
運命のような偶然が結局は繋がるべき人を繋げているのだと思えるね
そこから更に堀の述懐へと続くわけか
本編では宮村が答辞のように堀と出会ってからの日々に感謝の言葉を紡いでいた。でも感謝しているのは宮村だけじゃなくて
本編では描ききれなかった欠片達の物語だからこそ本編とは異なる堀の答辞を描けたのだろうね
そしてエピローグ、いつも通りの呼び出しかと思いきや、広がっていたのは見たこと無い堀の姿。恥ずかしいだろうにあれを真っ先に宮村に見せたいなんて可愛らしい
そんな可愛い彼女に合わせて宮村も短くするなんて
本当にこの二人は出逢った事で新たな世界を次々と広げていくね
互いに滅ぼし合うしか、犠牲を重ね合うしか無いと思われた人類とフェストゥム。それが総士と美羽によって祝福を誰しもに分け与え誰も知らなかった未来に辿り着けたという事なのかな…
『蒼穹のファフナー』という作品がこれ程までの完全無欠な終幕へ辿り着けるとは見始めた頃は想像もしなかったなぁ…
美羽の祝福は戦闘の終わりを齎すと共に対立も終わらせ、更に彷徨ってきた者達を竜宮島へ帰還させるもの
過去の美しさと比較すれば今の竜宮島は命なき島に思える。けど、これからは戦いではなく復興という大仕事にひたむきになれるならそれは終わりではなく始まり
「ただいま」の言葉に籠められた意味はとても感慨深い
竜宮島帰還に合わせ、帰らぬ人と思われた仲間達が戻ってくる様は本当に良いなぁ
犠牲の多い旅路だったけど、全てを喪った訳では無いと判るよ
それでも喪失しない事が正しい訳では無いから、帰還後の島から旅立つ者も居る。その一番手が初代から登場していたショコラとなったか……
弔いと再出発の灯籠流しは死者を意識させる為に彼らの存在を再認識させるもの
また、新たな出発を前にした一騎と真矢はけれど終わりではないから、始まりを前提としたものになる。旅に誘う一騎と帰る場所の真矢
誰も彼も一緒に居なくても共に在るのだと感じられたよ
ラストに❝Shangri-La❞が流れた時は感無量になってしまったよ……
多くの犠牲を含みつつも、犠牲を犠牲として終わらせまいと進み続けた本作だからこそ辿り着けた境地
長い時間に亘って視聴してきた事もあって、この完結で得られた感慨にじっくりと浸りたい気分ですよ…
ヒューマノイド故に調整した誕生が可能だし、生誕後も調整可能という事か。子の調整の主体が大人である以上、子は大人の勝手に拠り人生が様変わりする
リサとトゥー・フィーという同じ脳紋を持つ二人の人生が全く異なるものになったように、須藤が母のコピーを探し続けるように
大事故に遭っていたり、髪を書き換えた母を身勝手と思いつつも、リサはそれなりの人生を過ごせているね
というより不可抗力により母を喪った事で、自分の人生は自分で選ぶ感覚を強く持ったように感じられる
対してトゥー・フィーは父により人生を定義付けられ、己をそもそも持てなかったヒューマノイドか
リサの代用品として作られたトゥー・フィーは最初から己が無かった
彼女が人生を手にしたのは自分の意志で父を喪ってから。でも罪過により人生は積んでしまうから、リサに成り済まし別の人生を手にするしか無いがそれも選べなかった
同じ脳紋を持つのに、同じ父を持つのに。全く異なる生を辿った二人の在り方は悲哀が満ちているね
リサもトゥー・フィーも親が居なくなってから人生を得たけど、須藤は母と離れても母の人生の面倒を見続けている感じなのか
きっと須藤がすべき事ではないし、母のコピーを見つけた処で何をするかも決めていない
その点では彼は自分の意志で大人に合わせて己の人生を選んでいる。だから彼がリサと離れてでも母を見つけようとするならそれは相当の覚悟の上なんだろうなと伝わってくるよ…
働き蟻にとって王と言えるティアと紫蟻は対立する存在。けど、どちらも直接的な戦闘力は無いから、互いには言葉で、そして働き蟻に対しては支配力で勝負する事になる
けど、王は他にも居たわけだ。紅炉も働き蟻に噂という支配を残した。それは紅炉に勝利は齎さなくても時を超えた勝利を『灯』に与えたわけだ
紅炉がティアに残した僅かな希望、『灯』がティアに投げ掛けた温もり
どちらが欠けても自信喪失状態だったティアを王の器に変えはしない。そしてティアが王になったからには働き蟻は彼女を助けるし、クラウスもティアを助けに現れる
また、クラウス自身も王と呼ばれていた事で、王に別の意味も見えてくるね
クラウスは王であっても『灯』を支配していたとは言い難い
でも彼女らとの交流がクラウスに成長を齎したなら、クラウスは支配せずとも王として彼女らを自らの力としていた事になる
他者を力とするのが王の別の在り方なら、ローランドにより英雄として覚醒し彼を力としたティアも同様と言えるのかな
結局、紫蟻は働き蟻や将軍蟻を支配できてもそれ以上は出来なかった
王としてはクラウスにもティアにも劣るから勝てる道理は無かった訳だ
無事に紅炉の復讐は成功し、ティアは彼女の遺産を受け取った
このミータリオ編はティアという王を中心に『灯』そのものを大きく成長させるエピソードとなったように思えるね
遂に明かされたレオ出生の秘密、歪な経緯があったとしてもレオが間違って生まれてきた訳では無く、レオが正しく人と魔族の血を引いているとも判るもの
人と魔族が混ざったレオの姿に間違いがないと言えるなら、生まれで身分を分けようとするセトの遣り方は間違いと言える
姿に基づく個を変える真実はそのまま反逆の構図も変えるもの
セトが目指すのは秩序による支配。けど、サーブルが拒絶したようにその秩序は全てが望む世の中ではない。対するレオが目指すのはより多くの者がそれぞれ望んだ姿で生きられる世界
回想で明かされたようにセトもレオのように生まれ持った姿により苦悩したタイプ。でも見出した答えは全く異なるもの
レオは他者への寛容を懐き、セトは王者への否定を懐いた
アヌビスがサリフィに問うのは姿というアイデンティティの問題
前回、アヌビスはレオの姿が思っていたものと違う為に立場を変えた。対するサリフィは姿が変わるからとアイデンティティまで変わるのではなく、異なる姿を持つというレオの個を見ている
個を見るという点ではアヌビスにも通じるもの。だから彼は仕えるべき王への忠誠を変えずに済む
サリフィがこれまで関わった者達が救援に現れる流れは良いね
ガロアを始めとして彼らは魔族と姿の異なるサリフィを介して友好を結んだ。そういった者達がセトの秩序を否定し、レオとサリフィという異なる個を持つ者の助けになる構図は本作が目指した終着点を明確にしているね
それ故に、魔族王の姿を取り戻したレオの帰還は皆が望んだものであると同時にオズマルゴの王に相応しい個なのだと感じられたよ
牧師と聖女ではない時間を旅行先で得て、久々に二人の時間を過ごしても変わらない二人の距離
その理由は出逢った時からローレンは牧師でセシリアは聖女だったという点も関係しているのだろうなと思えるEPだったよ。それだけに屋根裏部屋での会話はその関係を距離を可能性が有ったと言えるのかな
聖女呼びを変えないのはセシリアとの間に壁を作りたい訳じゃなく気恥ずかしさが先立ってしまうだけ
誰も取り合わない大雨の件を必死に訴える彼女はあの時点で特別な存在だった。また今は居ない祖父の教えもローレンを縛る一因なのかもしれない
彼は聖女を大切にし過ぎている
でも、星空を見上げて綺麗だと言い、一緒の時間を過ごしてくれる少女が触れる事すら許されない相手の筈がなくて
ローレンが認めるべき感情は色々とあるけれど、結局の処はセシリアとどうしていきたいかという点を自分の中で明確化することなのだろうね
エピローグ部分で示されたように彼の望みそのものは既に明らかなのだし
心霊スポット巡りでもオカルトに巻き込まれたわけでもなく、自ら悪霊の居城へ乗り込む今回
いわば自分達は攻城側で相手は籠城側。だから生半可な覚悟や準備では太刀打ちできないのは当然
何も出来ぬ内に追い込まれる様子はホラー感たっぷりだが、だからこそ逆転するだろう夜宵の活躍も待ち遠しいね
ルディとしては不能治療の手掛かりを得た段階。けどフィッツとしてはいよいよ正体を明かさねばと追い込まれた段階
フィッツ視点で進行する事で淡い恋物語の様相を守れているね
子供時代から続きながら一旦途切れてしまった二人の関係。それがようやく有るべき形に戻れたように思えたよ
自ら踏み出せないシルフィの背を押すアリエルが良いね。友人を幸せにしてあげたい、友人だから助言を信じられる。そういった尊い関係性
それでも結局はシルフィの努力次第。……けど、まあアリエル達をドン引きさせたように彼女はきちんと望むべき未来を思い描いているから一歩踏み出せば大丈夫だったのだろうけど(笑)
作戦はさておき、関係復活の要は途切れた繋がりを思い出すこと
だから子供時代から持つ杖、子供時代の経験が鍵となる。でも思い出さなきゃならないのはルディの側だからシルフィは待つしかない
震えは寒さによるものであり緊張によるものであり。同時に途切れた過去と現在を繋げる代償だったとも言えるのかな
少年期を繰り返すかのような脱衣。行為は同じでも、あの時はシルフィが女性とは知らなかったが今はフィッツを女性と知っている違いが有る
脱がされる際の反応は既知のものである為にその意味が現在と繋がる。自然とフィッツとシルフィは繋がった存在となる
ようやく名前を明かす事が出来て想いが報われた彼女の様子は本当に喜ばしいものだったね
おお、堀両親の学生時代だ
欠片達の物語だから描ける過去の掌編。あれだけだと短すぎるが、現代の堀家を繋げ描く事であの掌編が活きているように思えるね
京介と百合子の出会いが根底にある堀家は今も変わらず愛が満ちている
堀や宮村、学校の話が主体になるとどうしても脇役になる創太、でも彼こそが堀と宮村を結びつけた張本人なわけで
また、京介と百合子の物語、そして堀と宮村の物語、それらの先にいる彼は賑やかな堀家を最も味わっている存在と言えるのかもしれない
かといって手厚く育てられているというわけではなくて
時には遊ばれて時には怒られて、そういう環境で育てられた彼の健全さは堀家の良さを誰よりも体現しているね
…なのに、彼が最も懐いているのは宮村でしかも彼をお兄ちゃん扱いしているのは、未来を先取りしているという事で収められないだろうか(笑)
社会を支配する超高度AIに疑問を呈するEP
超高度AIの運用は信頼に拠って成り立っている為に人々は無意識的に超高度AIを信じている。AIなら間違いないと考えている
逆に言えばAIに歯向かう者は社会のはみ出し者になる。それがテツヤや勅使河原になるのかな?
テツヤに殺されそうになった女性は紙幣を差し出し逃れようとした。紙幣とは社会における信用取引により成り立つ。社会を支配する超高度AIに挑むテツヤに効く筈がない
取り調べでのテツヤの発言は支離滅裂と思えるが、終盤の言い分を聞くと見えてくるのは彼自身がバタフライエフェクトを狙っているのではないかという点
そう考えると、殺害シーンや恋人との会話は理知的に感じられる。彼はそこまで狂っているとは感じられない
AIにより殺人の方法や動機は判明するだろうけど、彼の主張である超高度AIが正しい存在かをAIは教えてくれない
結局、彼は社会から抹殺される。それを見送った須藤は何を思うのか…
勅使河原の活動を詐欺と疑う中野は彼女を社会から爪弾きにすべきと考えている。その為の告発
AIによって社会は管理されようと死後の世界は社会に含まれない。それを説く勅使河原は全てを詳らかにするAI社会に反する存在、信用すべきではない
でも未知が未知のままでは救われない者が居るなら一種の必要悪
ヒューマノイドにも等しく訪れる死をひっくり返すのは勅使河原に言わせれば「人を不死にするより難しい」。神が定めた人間の死より難しいMICHIの仕組みだなんて、それではまるでMICHIは神を超越した存在かのよう
今回のEPを見ると、超高度AIを信用する・スピリチュアルを信用する。両者に果たして違いなんて有るのだろうかと考えてしまうよ
事前の想定と異なる展開だったけど、その相違が今回のサブタイトルに深い意味を持たせているような
EXODUSでは絶望的な戦場に降り立ち全てを一変させた一騎と総士を『英雄』と呼んだ。今回は犠牲を受け容れた一騎と犠牲を否定する総士という新旧を指して『英雄』と言ったかのよう
一方で美羽だって一騎側の英雄として犠牲を許容した。それを代えたのは総士の思うが儘の言葉。マリスが救えなかった彼女を救ったのはある意味で総士が二人の英雄となったとも言える
そうなると、一騎という英雄と別の道を選ぶ総士と美羽の二人を新たな英雄と指しているようでもある
英雄を超えた総士と美羽が導く可能性、それは『蒼穹のファフナー』という作品が新たな地平線に辿り着いた事そのものを表しているかのよう
長い長い物語の果てに示される若い世代の祝福がどのようなものか見届けたいね
分断されても連携により働き蟻を撃破する『灯』に襲いかかる新たな働き蟻。守るより攻めが得意な彼女らを攻め尽くす無限の敵
終わらない敵の嵐は一方で働き蟻にとっても無限の苦痛の嵐に居るのだと判る
だからこそ倒すべき敵は働き蟻ではないとも見えてくる
無限の嵐の中で己が遣るべき事に突き進む『灯』の中で唯一迷い続けるのはティア
指揮者として皆を導く筈が己の弱さに負け俯く彼女を励ますのがアネットなんてね。チームの中で異物と言えるアネットが伝える英雄の物語とリーダー・リリィが示すティアの出来る事
それは弱さを自覚させた敵との対話
けれど、ティアは弱さを完全に克服できたわけではないからローランドにより更なる闇へ落とされる
そして繋がる過去の英雄とこれからの英雄
働き蟻を統べる紫蟻、『灯』を統べる夢語。両者の対話は嵐渦巻くミータリオにどのような英雄を顕現させるのだろうね
王の正体が国民に分かってしまった事で生じる国の分断は人々すら分けてしまうもの。
魔族と人間の血を引くレオが推し進めた人との融和が全く異なる意味に変わった状況。それは人々に何を信じ、何を受け容れるかを問い掛けるものになったようで。誰にとっても大きな試練
正体が人であった為に主を代えたアヌビスのように、相手が自分と分かたれた存在と判れば共に居るのは難しい。同じ側に居る者としか結べない
種族差別に拠る秩序、同種族のみで固まる者は理想を得るが、異種族で暮らす者は非道を味わう
かといってそれを助けたサリフィ達に礼を言えない辺り、種族の分断は人の情では簡単に越えられない
一方で分断されない者も居るね
ヨルムンガンドにラント、そしてアミト。彼らは種族ではなく相手その人を見ているから相手との違いを重く見ない
でも民に仕えてきたレオは違う。自身の違いにより民が分断したならレオはオズマルゴに居られない
でもサリフィがレオという個を見て関わりを変えないように、正体がバレてもレオは変わりはしない
民から非難されてもレオがオズマルゴの王である事実は変わらない。そしてサリフィが自身を信じてくれるのも変わらない。そこへ分断に惑わされない者が集えば目指すべき場所は明確
国を追われた王が国に帰るが、そこは自身を歓迎しない。それでもレオが改めて王と認められれば国の分断は終わる
レオとサリフィ、最大の試練を迎えたね
ああまでセシリアに色々言われて気づかないローレンって、どうなんですかね……
アベル・ヘーゼリッタと別れて、久々に二人きりの空間。以前に戻った形だけど賑やかさを知ったから寂しさをより感じてしまう
それに乗じて急接近できた筈なのに…
旅行先で聖女の悲劇を知り、呼び方を一時的に変え、ネックレスもプレゼントし…
二人は関係を大きく変えられる筈。セシリアだって気合を入れてる。なのにローレンの鈍感さが全ての邪魔に……
そりゃ何も起きないままヘーゼリッタ帰還の時となるのも仕方ないというものですよ(笑)
学園での地位に魔法陣研究、クリフの恋模様、人形制作、ゾルダートとの交流等々…
どれもまずまずの成果を出している。でもルディが学園に来たのは全く別の理由から
本願を示すべき矢印は大人しいままでルディの行動が方向性を見失いつつ有るように思えた処で待ってましたな展開となったね
当初、転移事件調査が中心だった頃はフィッツとの交流は多かった。それが減ってしまったのはルディのタスクが増えた背景に留まらずナナホシにより転移事件の鍵を得てしまったから
ルディの矢印が他へ向いてしまえば当然関わりも減る
だから転移事件を理由とせずフィッツとの交流を再開させるには直接フィッツ向かう矢印が必要だったわけだ
フィッツに無視されたという疑惑はルディの心を刺激するものに
当然導き出される結論、望む可能性。そこで偶然得た真実
示すべき対象を示さなかったルディの矢印が遂に反応した展開。これでフィッツの正体を知った時にはルディがどのような反応を示すのか俄然楽しみになってきたよ
あの夜宵が神様に喧嘩売った件を反省していたのは意外。彼女にも一応の自制心は有ったのか。その後、既に神殺しを達成している事で更に驚かされたけど
心霊スポット巡りの意味が変わった今回、それは同時に夜宵と螢多朗の関係変化の意味も併せ持っていたようで
愛依を救う為の神殺しに必要な準備は果てしない。命を失う恐れはこれまで以上
それでも螢多朗は引かずに同行すると腹を括った。それは夜宵と関わり始めた頃の彼には見られなかった傾向
ヤバさは跳ね上がっても彼はもう逃げない。夜宵と一蓮托生のつもりでいる
だから夜宵は彼を相棒と感じられたわけだね
元々多くの無茶をしてきた夜宵。今は螢多朗がその無茶を支えつつも彼女を守る相棒となっている。だから夜宵は無謀な神殺しへ向かえるのだろうね
…その勢いで最恐心霊スポットに連れ込まれてしまった螢多朗は可哀想としか言い様がないけど(笑)
気になる人にチョコを渡すイベントにてどう行動するかで相手へ向ける感情が見えてくる
沢田は堀が喜ぶ物を渡したがるし、堀は宮村に渡すハードルの高さに悩む
他にも特別なイベントへ向けて様々な葛藤を見せる面々が描かれたね
チョコを渡したら相手が喜ぶなら渡したくなる
堀のチョコは人を選ぶビターなものになり自信は持てず。ていうか、友達に配れる宮村に勝てるチョコなんて初めから作れないわけで
なら、結局は相手に渡すという行為が肝心要、むしろ籠める意味や緊張が特別な味になる
綺麗で美味しいケーキを作った宮村だってちょっと失敗していて、堀の反応に安心していた
だから似た意味が籠められた堀のチョコだって宮村は喜ぶわけだ。二人がチョコに籠めた味は同じ。だから二人の遣り取りはいつだって微笑ましいし、ニヤニヤしてしまう
桜のは少し悲しいチョコだったなぁ…
透だけには渡せないけど、渡したくないわけじゃない。だから由紀を介して、彼女にも渡す事でチョコの意味を友達へのものにした
というより、由紀に渡す事で彼女へのメッセージにもなっているように感じられて…
とても未来志向の有るチョコだったのかも
沢田は井浦を優良物件と思わないが、それでも渡したい野上を応援する。「誰かに話を聞いて欲しかった」なんてまるで自分かのよう
結局野上は渡せなかった。でも気持ちを渡したい別の人には渡せたわけで
沢田と野上の間で遣り取りされる「友チョコ」は尊いものだったよ
ディストピア的なエピソードを重ね描いた回だったね
AIの進歩で様々を容易に調整可能な世界だから、都合の悪い又は我慢のならない物を許容できない
かといって思いの儘に規制するのも間違いではないかと問い掛ける内容と感じられたよ
親にとって許容し難い不健全アニメ。子供の視聴を制限すれば無理解な親と思われるから健全な番組だけ流れるよう規制したくなる。それが良い社会に繋がると思い込む
小山田の主張は別物。健全を突き詰めると人間の居場所すら無くなると言う
これは不良の登場によって補足されているね
暴力を振りまく不良は不健全の極みに思える。しかし血を見て逃げたならそれは小物だし、不良に怯えた田口も小物、両者は同類
社会からそのような不健全な悪を排除するならどちらも排除される。不健全や悪を許容すべきとは思わないが、人が人で居られる社会の為には安易な排除は宜しく無いと言えるのかな
篠原が勤める学校はいわば田口が求めた不健全を完全に排除した世界かな
親が批判する要素を排除・否定した学校。その状況を維持する為に決まりは多くなるし、決まりを破る者は不健全の烙印を捺される
親が喜ぶ学校社会、それは果たして子供を真に思い遣るものなのか?不健全を完璧に排除すれば健全を実現できるのか?
望む学校教育が行われていると感じる親は社会を肯定するだろうし、大人の押しつけに反発する子供は社会を否定する
結局、その意味では社会に集う全ての者のコミュニケーションによってしか健全なんて実現できないのかも
だからこそ、学校社会の軋轢を体感したパーマが児童ケアに当たっている様子に希望を感じてしまうよ
敵のトリックを見破った事で見えた逆転への道。総士と美羽が作戦の要となるのは変わらずだけど、ここに来て気になる雰囲気も生まれた…?でも、あの総士だしなぁ……
一騎との会話シーンに代表されるように、今の総士は人として様々を学ぶ方が優先される気がする…
作戦を控えた壮行会の様子はとてもほのぼのとしたもの
「必勝」なんて掲げられていても、メインは誕生日祝いとなるし、食べるのが終われば子供達は雪遊びに夢中になる
とても平和な光景、これこそ島の皆がずっと大切にして来たものだと改めて感じられたよ
そして始まる蒼穹作戦は毎度の如く厳しいものに
一つの局面を有利にできても敵は常にこちらを上回り犠牲は嵩んできた。操もその一つに加わるかと思いきや…
いや、まさかあのタイミングで来てくれるとは!遂に辿り着いた竜宮島、再起した芹。あまりの感慨深さに感動してしまったよ!
これで次回タイトルがあれなのだから本当に堪らないね!